3社の目指す方向性も似ていた「Win-Win-Win」の関係


―― スポンサー企画を実施するにあたって、最終的には何を目的としていましたか。

田中 スポンサー契約のテーマは「大人の真剣な遊び」です。ミツカンとしては、ファンの声に応えながら寄り添っていける存在になることを目指しています。一時的なファンの獲得だけではなく、スポンサー契約を通してファンに盛り上がっていただければ、「味ぽん」や「カンタン酢」などの単体商品だけでなく、ミツカンというブランドへの「箱推し」が起きると思います。
 
ジュビロ磐田×ミツカン 軌跡動画【ミツカン公式】

結果的に、ジュビロ磐田さんのファンがミツカンの商品を買い回ってくれるようになりました。これは単体商品のファンではなく、ミツカンのファンになっていただけたと感じています。当社としてもLTV(顧客生涯価値)の向上は大きなテーマなので、今後も良い関係を築けるといいなと考えています。

増田 ジュビロ磐田のファン・サポーターがスーパーマーケットでミツカンさんの商品を購入したことをXで報告してくれることが増えましたね。もちろん我々はそのようなことをお願いしたわけではないのですが、ジュビロ磐田をサポートしていただいている企業のファンにもなるんだと感じました。それはスポーツクラブの面白いところだと思います。
  

ジュビロ磐田としては、ミツカンさんと年間のユニフォームスポンサー契約をさせていただくことが目標です。先ほどもお伝えしたように、ジュビロ磐田のユニフォームの鎖骨部分は年間を通して空いており、ファン・サポーターもそのことを気にしています。アドミラルさんがオフィシャルサプライヤーとなり、そこからミツカンさんとの話題となった一連の取り組みによる、ファン・サポーターからの期待感はひしひしと感じています。

根鈴 我々は、アドミラルブランドのファンをつくることが最も実現したいことです。商品に対してだけではなく、「アドミラルだから」が理由となって購入いただけることを目指しています。ミツカンさんとジュビロ磐田さんは日本中にファンや消費者がいらっしゃるので、一緒になってアドミラルブランドも知ってもらえたらと考えています。
  

田中 アドミラルさんの顧客の多くはゴルフやテニスなどをするシニア男性で、ミツカンの顧客の多くは料理をするシニア女性です。両社の顧客層は重ならず、若い年齢層にアプローチしたいという考えも共通していて、運命共同体のようなところがあると感じています。今回のような取り組みをしていると若い世代もSNSで見て面白がってくれて、今後シナジーが生まれそうな雰囲気もありますね。
 

ファンマーケティングから事業貢献へ


―― そこから一過性の取り組みではなく、スポンサー契約含め継続できている理由を教えてください。

田中 最初の2023年は「大人の真剣な遊び」をテーマにファンに寄り添う姿勢を強調してきました。ただ、ファンの間で盛り上がっている一方、スポンサー継続が不透明だったことに悩んでいました。

2023年のお祭り的なイベントが一度終わり、翌年の2024年には、それを超える盛り上がりは難しいだろうと感じていました。当然、社内でも「この熱狂の後に、新たなファンを呼び込めるのか?」という議論が起こりました。その結果、次は事業貢献というキーワードにたどり着き、ミツカンのマーケティング施策に合致する形で、新たな方向性を模索する必要があると考えたのです。
  

そこで出した答えが、ジュビロ磐田さんのチームカラーに合った「フルーティス」という商品を活用し、それを公式ドリンクとしてファンの皆さんに認知してもらうという施策でした。この取り組みを通じて、ブランドの価値を高めるために、ジュビロ磐田さんにもご協力いただけないかと提案し、2年目は年間サポーティングカンパニーとして1年間を通じた契約になりました。

また、ジュビロ磐田さんのサードユニフォームの鎖骨部分にミツカンのロゴを入れることが実現しました。このように、ファンマーケティングから事業貢献へとシフトさせるアプローチを進めてきたのが、この2年間の取り組みです。

増田 ジュビロ磐田としては1年目の盛り上がりを受け、2年目以降も続けたいという強い思いがありました。その背景には、ファン・サポーターからの期待とプレッシャーがあり、それに応えたいという姿勢があります。

ただし、田中さんのおっしゃるように事業貢献という視点を抜きにして、継続することは難しいのが現実です。スポンサーになることは単なるボランティアではなく、ビジネスとして成り立つものでなければなりません。そのため、地元との縁や事業ニーズへの貢献が重要な要素となると思います。
  

今回、アドミラルさんをきっかけに愛知の企業であるミツカンさんが協力してくださったことは非常に大きなことで、ジュビロ磐田としては「何でもやる」という姿勢で臨み、社内ではその考えが共有されています。

スポンサー企業の課題にアプローチし、その対価としてご協賛いただくことで、チームを強化しています。チームがより強く魅力的になることがスポンサー企業やファン・サポーターへの最大の還元であり、我々が継続して取り組むべき使命だと考えています。