カンヌライオンズ2025の傾向、一つ目は「難題に広告的機知で一矢!」
さて、初日=16日月曜日の夜に行われた贈賞式では、個人的に注目の部門でもあるアウトドア部門の受賞作が今年も面白かったです。昨年も書きましたが、カンヌライオンズは数年前から、30近くある部門(2025年は30部門)を9つの「トラック」に分けているのですが、その中でも「クラシック」と名付けられたトラックがあります。そのトラックに分類されているのが「フィルム部門」「プリント&パブリッシング部門」「オーディオ&ラジオ部門」、そして「アウトドア部門」です。
その中でもアウトドア部門は、いわゆる屋外看板を考えると「最古の広告メディア」とも言われています。かと思えば、同時に屋外イベントなども含まれ、ネット上での拡がりを見せる応募作も少なくなく、今日現在における「広告の在り方」が如実に見られる部門だと感じています。
会期が始まってから同時並行で各賞の審査が行われるのも、カンヌライオンズの特徴の一つ。
僕は毎年、その年のカンヌライオンズの傾向を、3つのポイントにまとめてお伝えするようにしています。ブロンズ以上の受賞作だけでも900点前後(毎年約3%)あり、それらの傾向を精査するのは難しいので、あくまでも僕が感じたポイントとなります。
そして今年は、そのうちの一つを、複数のアウトドア部門の受賞作からすでに感じてしまいました。その内容と、関連する事例を1つご紹介します(資料を見ながらの詳細な紹介ではなく、あくまでも贈賞式で僕が見た概要をお伝えします)。
贈賞式会場へと繋がる赤絨毯の階段。ここで記念撮影をする人も多い。
今年の傾向の一つ目(現段階でご紹介できるのは一つだけですが)は、「難題に広告的機知で一矢!」です。
現在、世界は様々な難題で満ちていると思います。それは、地球温暖化や海洋ゴミの増加といった、誰にでも分かりやすい「社会課題」とも言えないような、なんとも対応に困るような難題です。
“社会課題解決モノ”が多いと言われて久しい、カンヌライオンズの受賞作。今年印象に残ったのは、社会課題とも言えないような難題に、広告的機知でみごとに一矢報いている事例です。
「クリエイティビティ」というと、なにやら高尚なもののようにも感じてしまいますが、「機知」(いわば頓智のようなものです)と考えると、また違った印象があるのではないでしょうか。この特徴を特に感じた、アウトドア部門ゴールド受賞作「The Gulf of Mexico Bar」(テカテビール)の概略をご紹介しましょう。
ゴールド以上の受賞チームは登壇し喜びを爆発。中南米の国のチームは国旗を持って来るケースも多い。
トランプ大統領が「メキシコ湾を『アメリカ湾』と呼ぶ」となぜか言い始め、Googleマップがそれに追随した……こういう話題は、特にメキシコの人にとっては、どう対処していいものやら分からない“難題”でしょう。そこに、まさしく広告的機知で立ち向かったのが「テカテ」というメキシコのビールブランドです。
テカテビールは、メキシコ湾改めアメリカ湾の洋上に船を浮かべ、そこに“The Gulf of Mexico Bar”を開設し、ビジネス上必要だという理由でGoogleマップ上に表示されるようにしました。“The Gulf of Mexico(メキシコ湾)”という、アメリカ大統領に反旗を翻すような内容ですが、「いえいえ、これはBarの名前ですから!」というわけです。面白いですねぇ。
ところが、その後にグーグル側が、その表示(Pin)を取り去ってしまうのです。それでも、テカテビールはあきらめません。取り去られても取り去られても、そのたびに洋上の船にBarを開設し、Googleマップ上の“The Gulf of Mexico Bar”の表示を手にしていったというお話です。
下記で、事例ビデオを見てみてください。笑えますよ。そして、痛快です!
テカテビール「The Gulf of Mexico Bar」
今年のカンヌライオンズの具体的な内容や様子については、次回の第2回目以降でもお伝えしていきます。第2・3・4回目は帰国後なるべく早い時期にアップする予定です。どうぞ、お楽しみに!
会場敷地内の一角では、企業による飲食物の提供が行われ、さながら学園祭のよう。
世界有数のリゾート地でもあり、沖合には巨大客船が。
この辺りの名物料理のひとつ、ニース風サラダ。
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