日本のリテール企業にとっての学び
売上を上げるためには、「専用アプリをダウンロードしないと使用できない」というハードルは大きいものです。今後、ゲストログインやGoogleやAppleなどのサードパーティログインのオプションを検討中ということで、本格普及はそれからと思います。どんなに優れた仕組みも、売上高が上がらないと持続できません。
現在のシステムでは4つのBINが設置されているため、同時受け取りの混雑はある程度回避できそうですが、注文が増えた場合はWalmartなどのBOPIS(Buy Online, Pick up In Store)と同様に、いつ受け取るかの時間枠を決めるなどのルール設定が重要になります。技術的には比較的簡単に実装できる仕組みですが、運用面での工夫が求められます。
興味深いのは、注文自体の操作は店舗の前にいなくても実行できる点です。筆者が観察していた際、周りに人がいない時間帯でもロボットがドリンクをピックしている場面を目撃しました。これは事前注文への対応か、またはデモンストレーション用の動作と思われます。

VenHubの自動販売機にはない特徴は、品揃えが「今すぐ欲しい」ドリンクなどの即時購入商品だけでなく、「後で買う」商品にも対応できる可能性を秘めていることです。週数回の商品補充のタイミングで取り寄せ商品も可能にするなど、新しい購買体験を提供することも仕組み上は可能です。事前注文システムの活用により、従来の「今すぐ欲しい」商品だけでなく「後で買う」商品への対応も可能になる点は、新しいビジネスモデルの可能性を感じました。
日本のコンビニエンスストア業界では、24時間営業の見直しや人件費の上昇が大きな課題となっています。VenHubのような完全無人システムは、これらの課題を根本的に解決する可能性を秘めています。深夜帯や早朝の人員配置が困難な時間帯でも、安定したサービス提供が可能になるからです。
また、駅構内や空港などの交通拠点での展開を考えると、限られたスペースでも効率的な店舗運営が可能になるメリットが大きいです。これは日本の都市部における土地の有効活用という観点からも重要な意味を持ちます。
カリフォルニア州の最低時給は16.5ドル(約2,442円:1ドル148円換算)です。アルバイト時給がアメリカの半額程度の日本ですが、治安が良いため、同様の仕組みがつくれれば防犯コストを抑えてより安価に開始することが可能でしょう。
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