現場の声を生かしながら「世界的なホテルブランドへ」
―― 高いブランド力を誇るレストランやホテルで接客の最前線に立ち、現在は近鉄・都ホテルズ全体のブランディングを担う立場になられたのですね。具体的にはどのような仕事内容なのですか。
現在はプレスリリースの発信や近鉄・都ホテルズ全体のホームページ運用を主な業務として、近鉄グループとのさまざまな連携・連絡の窓口も務めています。各ホテルからリリース配信の依頼を受けて、原稿の校正や、法令に触れていないかのチェックや表現の統一、配信の手配をしたりします。ホームページではUI・UXの改善について、今まさに検討を進めているところです。海外の方のご利用も多いので、使いやすい動線になっているか、各ホテルの魅力がきちんと伝わるレイアウトになっているか、変えるとしたらどう変えるか、費用面も含めて関係者と協議しています。
また、直接の担当ではありませんが、同じチーム内で「都プラス」という約25万人弱が加入する会員プログラムについて会員数推移や売上に対する比率、予約の経路がOTA(オンライン・トラベル・エージェント)なのか、リアルエージェントと呼ばれる旅行会社なのか、自社サイトなのかといったデータを毎月集計・分析しています。25年度中に会員数30万人を目指して新規入会キャンペーンなどさまざまな施策を打っており、近鉄・都ホテルズのファンを増やしてロイヤルティを高めていくにはどうしたらいいか、チームメンバーで活発に議論していて、私も志摩観光ホテルでの経験や現在の担当の知見を生かして議論に加わることがあります。
―― どんな点に難しさや課題を感じますか。
志摩観光ホテルを離れて、あらためてその魅力や特別さを実感しており、6年も勤務できたことは、いろいろな意味で自分の強みだと思っています。ただ、これまでひとつのホテルについて考えればよかったのが、本部では、当然のことながらグループ全体の方針を決めていかなければなりません。経験不足を痛感することもあり、いくつものホテルでさまざまな業務を経験された先輩たちに相談しながら、考える幅を広げるよう努めています。
たとえば、リリースの文言ひとつとっても、各ホテルで使われてきた独自の表現や雰囲気があり、近鉄・都ホテルズとして統一的に配信する場合に表現を修正したり、調整したりすることがあります。当社のホテルは志摩観光ホテルのようなリゾートホテルから、外資系ホテルグループと提携した「ダブルブランド」のホテル、シティホテルまで幅広いカテゴリーがあり、特にダブルブランドではブランドの方針が異なる部分や独自の規定もあるため、そのあたりの調整に難しさを感じることもあります。
また、ホテルの現場ではすぐ身近に感じられたお客さまの声やお困り事が、本部勤務だとどうしても感じ取りにくくなるのも、難しさのひとつです。私たちにとってサービスとブランド価値をお届けするのは何よりお客さまなので、そのニーズを把握するには本部だけでなく、現場の目線を大事に、寄り添いながら進めていかないといけないと実感しています。私自身、志摩観光ホテルにいた頃に、本部に対して「もっと現場の声を汲み取ってほしい」と感じることがないわけではなかったので、各ホテルの方針や意向を丁寧に聞き、生かしていきたいと心がけています。
―― これからの目標を教えてください。
各地で多種多様なホテルが建設される中、「選ばれる存在」でなければならないと感じています。「都ホテルズ&リゾーツ」のブランドを高めていくのが短期的にも長期的にもミッションです。
少し前から、志摩観光ホテルのブランディングプロジェクトが始まっており、現地スタッフや外部の企業とも協議し、志摩観光ホテルのブランド再定義、ブランド価値向上のためのさまざまな施策に取り組んでいるところです。また、このプロジェクトはいずれ他のホテルにも波及していく見込みなので、自分も志摩観光ホテルでの経験を生かして、各ホテルのブランディングに貢献できたらと思います。
また、近鉄グループとの連携窓口も担っているので、近鉄グループが長年の事業活動により培ってきた近鉄ブランドを訴求し、高度な連携を図り「都ホテルズ&リゾーツ」の存在感を高めていくことで、ホテルと近鉄グループの成長につなげていきたいです。キャリアの目標としては、バックオフィスを含め、今後もホテルを支えるさまざまな業務を経験しながら、近鉄・都ホテルズを世界的に通用するホテルチェーンブランドに育て、マネジメントできる立場になりたいと思っています。
―― 最後に、仕事に生きるような趣味や心がけていることはありますか?
ホテル巡りが好きです。いろいろなホテルのInstagramをフォローして、客室やレストランの雰囲気を見るだけでも楽しいですし、ロビーに入ってみたり、母や友人と連れ立って食事やアフタヌーンティーをしに行ったりすることもあります。やはり、自宅とは違うけれど落ち着ける空間が好きというのが、ホテリアーとして土台になっているかもしれません。
―― 本日はありがとうございました。
【上司の視点】知見と対話力でホテルチェーンの未来デザインを
- 近鉄・都ホテルズ 営業企画部 部長
浜本 康夫 氏
当社が運営するホテルチェーン「都ホテルズ&リゾーツ」は、25施設で6000室超の客室を擁しますが、客室に加えてレストランや宴会場を持つ「グランドホテル」が多いのが特徴です。レストランや宴会場は地元のお客さまのご利用が多く、「地域の顔」としてのホテルの役割を担っています。志摩観光ホテルはその代表的な存在なのですが、田中さんは、そんなホテルのレストラン部門とマーケティング部門に長く従事し、まさに「志摩観光ホテルブランド」ひいては「都ブランド」の担い手として奮闘してきました。
チェーン本部マーケティング担当になってからも、キャリア的にもセンス的にも、現場(顧客)の視点と広報(マーケター)の視点の両方を持つ稀有な存在として、代わりのきかない人材になっています。
田中さんは、マーケターとして最も重要な「対話力」に優れ、新しいものや考えに触れた際に、自らの感性や考えもアップデートしていく柔軟性も持ち合わせています。これまでは、志摩観光ホテルというひとつの光を輝かせてきましたが、これからはホテルブランド全体を照らす羅針盤となって、世界的なホテルチェーンへの可能性を広げていって欲しいと思います。

- 1
- 2




メルマガ登録

