革新の最大の敵は“コンプレイセンシー”
——複業は何をされるんですか。
書籍を出版したり、週刊誌の連載をしたり、講演したり、講師をしたり、本当に色々ですね。テックベンチャー企業を中心にマーケティング担当の顧問をする、というのもその一つです。マーケティングの顧問でいうと、なぜテックベンチャーなのかと言えば、先ほどからお話している新たなマーケティング理論を確立しようとすると、最大の敵は「コンプレイセンシー(complacency)」だと思っています。日本では、あまり聞きなれない言葉だと思いますが、「(悪い意味で)満足している」という意味です。
わかりやすく言うと、たとえばスマートフォンを大手キャリアから格安SIMにした方が、経済的にいいとわかっていても「別に困っていないし、まあいいか」と現状で満足してしまう状態です。このコンプレイセンシーは、あらゆるイノベーションの敵でもあります。
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PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」がうまかったのは、モバイル決済を使わない人は、これまで使う理由が特になかった。そこに、無理やりにでも使ってもらう理由をつくった。それが、コンプレイセンシーを打破するために最も有効な策だったのです。
ベンチャーにはいい意味で過去がないので、そもそもコンプレイセンシーは存在しません。一方で、ピーター・ティールが「ハード・シングス」の中でも説いていた通り、スタートアップの中でマーケティングやブランディングが、技術同様に重要視され始めています。
僕としては、ヤフーとは別に、そうした環境で新たなマーケティングの考え方を実践していくことにも興味があります。
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書籍『たとえる力で人生は変わる』(発行:宣伝会議)
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