いわば「乗っかりクリエイティブ」の隆盛。
かつて広告業界で「4マス」と呼ばれ、広告メッセージを届ける主要な乗り物であったマスメディアは、その“燃費”を大幅に悪化させたため、多くのブランドがデジタルメディアやソーシャルメディアに広告コミュニケーション活動の場を拡げました。
その傾向はさらなる拡がりを見せ、“メディア=媒介するもの”は、従来では考えられなかったものにまで拡がっています。
例えば、ハンバーガーチェーンWendy’sによる「Keeping Fortnite Fresh」。Fortniteというのは、人気のオンラインゲーム。このゲーム内に赤いフードを被った女の子を登場させ、ゲーム内にある冷蔵庫を片っ端から破壊していったという事例です。
そこにあるメッセージは、Wendy’sの信条である「冷凍肉は使わない」。そのメッセージは、マスメディアでもソーシャルメディアでもなく、人気オンラインゲーム内でキャラクターが“冷蔵庫を破壊する”というやり方で表現され、大きな話題となったと言います。 Wendy’s「Keeping Fortnite Fresh」の事例ビデオ
ここでWendy’sは、Fortniteという人気オンラインゲームに、適切なやり方で“乗っかった”のだと僕には思えます。こちらは、ソーシャル&インフルエンサー部門のグランプリを受賞しました。
また、ダイレクト部門、モバイル部門、チタニウム部門の3部門でグランプリを受賞したバーガーキングの「The Whopper Detour(廻り道ワッパー)」も、この“乗っかりクリエイティブ”の一種と考えることができます。
この事例は、全米に1万4000店あるマクドナルドの近く(約180メートル以内)だけで受け取れる、ワッパー(バーガーキングでは自社のハンバーガーをこう呼ぶ)が1セントになるクーポンを自社アプリに配布したというもので、来店数が4年間で最高を記録するなど、大変な成果を挙げました。 バーガーキングの「The Whopper Detour(廻り道ワッパー)」
これはいわばライバル社を「メディア=媒介するもの」と想定し、「ライバル社の店舗の多さ」に上手に“乗っかった”クリエイティブだ、と考えることができると思うのです。
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ヒントや刺激がたくさんあったカンヌライオンズ
4回にわたってカンヌライオンズ2019のレポートをお届けしました。昨年から会期が5日間に短縮され、にもかかわらず数多くの部門やセミナーやイベントが催され、大変に忙しい日々でした。
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「混沌」と表現する人もいるくらいですが、しかしそこにはいまだに「これからの広告コミュニケーション」に関するヒントや刺激がたくさんありました。僕としては、これからもウオッチングを続けて行こうと思います。
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