非常事態の「ウラヌス」
そう言いかけると、「ウラヌス」のコントロールパネルが電子音と同時に突然、輝いた。地上からの緊急コールだ。コントロールパネルのモニターから、軍服の男が必死の表情で叫んだ。ダグラス大佐のようだ。
「ドクター、本当にテロリストどもが動き出したぞ。トゥーンべリだ。プロタゴラスを潰そうとアレキサンドリアとアリスタルコスを爆破すると」
「アレキサンドリアも?あそこには家族がいるんだ」ドクター・イドリュムの顔が真っ青になった。
「リヒター、ブルーフォースをまわしてくれ」
「とっくにやっている。それよりそこも危ない。早く研究員を脱出させろ」
「自分はここに残る。仮に軌道エレベーターがやられてもウラヌスは問題ない。念のため研究員は脱出させる」
ドクター・イドリュムがこちらに向かって言った。
「きみたちも逃げろ」
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コントロールパネルの非常ボタンを押し警報を鳴らした。
「全員緊急退避。気密服を着用の上、脱出ポッドへ向かえ」
「行きましょう」とジオヴァーナはカズアキの手を取って促した。「ウラヌス」のなかで警報が鳴り響き、無重力空間でポッドに向かう研究員たちの流れに身をゆだねた。