西欧圏以外から「ブラックスワン」は見つかるか

 最初に述べたように、グローバル市場が欧米由来の経済であればこそ、それ自体がビジネスやマーケティングのエコシステムを形成しているのであって、その構造が変われば新たな視点をもった経営論やマーケティング論が生まれることは予想に難くない。

 その意味ではアリババやテンセントを擁する中国や、イスラエルやインドなどテクノロジーに長けた国々から、今後も生まれてくる可能性がある。

 しかしながら、現在の成功モデルが全て米市場を標的にしている限りは、戦略的には米で評価されることが世界市場の近道になるだろう。
 
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 一方で、グローバル市場はますます同質性を増しているため、差異を考えるよりも共通性を明確にした方が効果的で、マーケティングの知識やスキルがますます米国中心主義になることも考えられる。

 そのときに、その差異がどれだけインパクトがあるものになるかは、どれだけグローバル市場に還元できるかによる。

 つまり、既存の欧米にとっての「ブラックスワン」になるかが本当の課題だろう。この最も良い例は、リバース・イノベーションの提唱者でもある、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのビジャイ・ゴビンダラジャン教授であろう。

 彼自身、インドの出身であり、自らがGEでインド市場向けに開発した低価格の心電図そのものが成熟した先進国にも利益をもたらした。リバースという言葉がすでに西欧中心主義的ではあるが、イノベーションはどこでも可能性があることを端的に示している。