博報堂は8月6日、訪日客数の多い5ヵ国(中国・韓国・米国・タイ・インド)で過去1年に日本に旅行した経験のある人を対象とする「訪日外国人のモノ消費」をテーマとした意識調査の結果を公表した。国別のインバウンド消費の特徴を見極め、ビジネス拡大に役立つヒントを見出したい。(調査時期は2025年3月、中国のみ6月も。回答数258人)

 調査を実施したのは、訪日外国人によるインバウンド消費を企業の売上拡大、さらには各国の国内消費(アウトバウンド)へとつなげることを目的に同社が設立した「博報堂クロスバウンド・ビジネス・ラボ」。「クロスバウンド」とは、これまで別々に捉えられてきたインバウンド施策と海外戦略を有機的に結びつけ、インバウンド消費を帰国後の持続的・多様な販売機会につなげていく取り組みを指す。

 

国別に特性、購入決定タイミングに違いも


 回答者が日本旅行中に購入した商品のカテゴリーは、全体では「お菓子」(49.8%)をトップに、「化粧品・美容用品」(46.2%)「食品」(42.9%)が上位を占め、約半数の訪日客が購入していることになる。

 国別で見ると、中国は「化粧品・美容用品」(44.6%)が抜きん出て多く、「グッズ」(37.2%)「洋服」(32.6%)と続く。「グッズ」「洋服」の購入割合は全体と比べても高く、逆に「お菓子」は29.5%と、他の国に比べて極めて低いのが特徴的だ。

 韓国は「お菓子」(66.7%)「食品」(54.3%)「化粧品・美容用品」(53.4%)と上位カテゴリーの比率が高く、購買傾向が顕著に見受けられる。米国は「洋服」が48.4%と1位で、服と合わせた「パーソナルケア商品」「伝統工芸品」がいずれも3割近くと、全体より高い購入傾向を示した。インドは「洋服」(55.0%)を筆頭に、「ジュエリー・アクセサリー」(41.1%)、「伝統工芸品」(35.3%)「パーソナルケア商品」(32.9%)の割合が全体より高いことが目を引く。

 海外販路を開拓する上では、国ごとに異なる購買特性を踏まえることが重要になるだろう。

(図表1)日本旅行中の購入物(抜粋)
出典:博報堂 プレスリリース

 また同ラボは、訪日客が購入を決めるタイミングは商品カテゴリーによって異なると指摘する。

 たとえば「化粧品・美容用品」「薬」は、日本への旅行前から商品情報に触れ、購入する商品・ブランドを確定している人が、それぞれ48.1%、40.0%と多かった。同ラボはこのような商品を「ブランド指名型商品」と呼ぶ。

 一方、「家電・電子製品」「洋服」「ジュエリー」は、「旅行前にそのカテゴリーの商品を購入すると決めていたが、ブランド・商品は決めていなかった」とする回答が多かったため、「カテゴリー指名型商品」と言える。また、「ジュエリー・アクセサリー」については「旅行の途中(店頭で見つける前)に買うと決めた」という答えも多かった。

「食品」「お菓子」も旅行前から検討はしているが、「店頭で見て、その場で購入を決めた」という回答が最も多いカテゴリーだった。このような「出会い型商品」は、旅行前だけでなく旅行中の活発なコミュニケーション活動が、購買決定の鍵を握ると言えるだろう。各商品の特質を踏まえたコミュニケーション設計が求められる。

(図表2)購入を決めるタイミング(5ヵ国全体)
出典:博報堂 プレスリリース
 

帰国後に商機あり


「今回は買わなかったが、次回訪日時に買いたいもの」について聞くと、全体的に「ジュエリー・アクセサリー」(18.1%)「バッグ」(17.5%)「伝統工芸品」(16.4%)などの割合が高く、すでに購入したものとは異なるカテゴリーが多かった。リピーター向けの新たな商機がうかがえそうだ。

(図表3)今回買わなかったが、次は買いたい商品(上位5カテゴリー)
出典:博報堂 プレスリリース

 さらに、再び訪日するかどうかに関わらず、継続購入したい商品カテゴリーを調べると、「お菓子」「化粧品・美容用品」「食品」「グッズ」「お酒」が上位となった。これらは、日本旅行中に実際に購入したものの上位5カテゴリーと一致しており、継続購入したい理由は品質やコスパの良さ、ブランドへの信頼感、周囲からの反応の良さなどが評価されている。

 インバウンド消費への注目が高まる中、その効果を日本国内だけで終わらせず、帰国後の継続購入など、アウトバウンド、クロスバウンドへと転化することが、ビジネス拡大への足がかりになると言えるだろう。

(図表4)継続購入したい理由(5ヵ国全体)
出典:博報堂 プレスリリース

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