「提携国枠」で、アジア戦略を加速
田岡 Jリーグでは、2014年から「提携国枠」として、アジア(2018年:タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)から受け入れた選手を外国籍枠ではなく、日本人選手と同じ扱いで試合に出場できるという取り組みを始めていますよね。ベトナムやタイのスター選手が移籍してくることで、そのファンも来日するようになったと聞いています。東南アジアの選手をJリーグに移籍させたいと考えるようになった、きっかけは何ですか。山下 それは、東南アジアのサッカーへの盛り上がりを目にしたとき、私たちが思っている以上に、各国にスター選手がいると感じたことでした。例えば、選手と一緒にレストランに行ってお店から出ると、すごい勢いでファンから囲まれたりするわけです。
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山下 修作 氏
Jリーグマーケティング
専務執行役員 Jリーグのマーケティング会社であるJリーグマーケティングにて、パートナー事業、イベント事業、海外事業を管轄しております。スポーツの可能性を最大限に発揮することを常に考え、競技の枠を超えた取り組みをしていきたいと思っています。
Jリーグマーケティング
専務執行役員 Jリーグのマーケティング会社であるJリーグマーケティングにて、パートナー事業、イベント事業、海外事業を管轄しております。スポーツの可能性を最大限に発揮することを常に考え、競技の枠を超えた取り組みをしていきたいと思っています。
日本でもカズや中田がセリエAに移籍したとき、海外サッカーのテレビ放映が始まったり、サポーターが現地まで観に行ったりということが起きたのと同じことが、アジアでも実現できるのではないかと、その人気ぶりを見て思いました。
田岡 コンサドーレ札幌(現:北海道コンサドーレ札幌)に、ベトナムの選手が入ったんですよね。
山下 はい。当時はまだ提携国枠はなかったのですが、ASEAN出身のJリーグ選手第1号は、コンサドーレ札幌が受け入れたベトナム代表のエース、レ・コン・ビン選手です。それをきっかけに実際にベトナムの国営放送がレ・コン・ビン選手の出る試合を放送したり、ベトナムでメディア関係の会社を立ち上げた住友商事がベトナム語で札幌のスタジアムに看板を出したり、ということが起きました。
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田岡 日本の企業は海外向けのブランディングが得意ではない企業が多いので、良い施策かもしれないですね。
山下 そうですね。北海道庁主導でベトナムに進出したい企業を集めて現地でビジネスマッチングを行いましたが、北海道の好感度が高いため現地企業からのウケが想像以上によかったと聞いています。アジア展開は先例がないので悩むことや失敗することもありますが、それ以上に面白さを感じています。
リクルートからサッカー業界に飛び込んだ経緯
田岡 山下さんは、大学卒業後にリクルートに入られたのですよね。山下 はい、サッカーの業界に入る前は、リクルートで「カーセンサー」や「エイビーロード」に携わっていました。「エイビーロード」はWebサイトの全面リニューアルを担当しました。当時は本の売上が減少し、Webサイトへの移行が見られた過渡期。でも、本の高い掲載価格をそのままWebサイトに移行するのに苦戦していました。そこで、ユーザーの使い易さを考えながら、文字情報だけでなく、現地の写真を掲載すると追加の費用が掛かる仕組みなどを導入して、売上を維持しながら移行に成功しました。
田岡 そこから、なぜサッカー業界に転職されたのですか。
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田岡 敬 氏
ニトリホールディングス
上席執行役員 リクルート、Pokemon USA, Inc. SVP、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、現職。ニトリのデジタル戦略を担当している。
ニトリホールディングス
上席執行役員 リクルート、Pokemon USA, Inc. SVP、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、現職。ニトリのデジタル戦略を担当している。
山下 もちろんサッカー好きという理由もあります。ただ、リクルートでは媒体を通してでしかユーザーと接点がないので、何か人の喜怒哀楽に直接触れる機会をつくりたいと思っていました。そのとき、日韓ワールドカップで日本中が盛り上がっているのを見て、サッカーを通して人々の感情に寄り添う仕事をしたいと思ったんです。
リクルート時代の先輩が4人ほど日本サッカー協会に転職し、日韓ワールドカップを機にスポーツマーケティング会社を起業していたので、私もそこにジョインしてJリーグから業務委託という形で、Webサイト運営やプロモーション業務を担当するようになりました。それがJリーグのビジネスに関わることになったきっかけです。