価値共創の場として百貨店の役割増す
林 直孝 氏
大丸松坂屋百貨店 / 常務執行役員 デジタル戦略推進室長 兼 DX推進部長
大丸松坂屋百貨店 / 常務執行役員 デジタル戦略推進室長 兼 DX推進部長
2026年の始まりにあたり、百貨店の果たす役割について、あらためて考えたいと思います。
ひとつ目は、インバウンド、すなわち海外からのお客さまとの関係です。2025年の訪日外国人旅行者数は11月までの累計で3900万人を超え、過去最多を更新しました。各地の百貨店にも海外からのお客さまが多く来店され、継続的な顧客として関係を築くためのCRMの取り組みも進み始めています。ここで重要なのは、海外のお客さまを「日本の価値を外のモノサシで評価してくださる存在」と捉える視点です。異なる価値観や美意識を通じて、日本の地域に根ざす人や技、物語に私たち自身が気づかされることがあります。その眼差しに注目することが、新たな発見につながります。
二つ目は、日本各地に存在する価値あるものを丁寧に探索し、百貨店ならではの解釈を加えて提案することです。単に商品を集めるのではなく、背景や想いを今の暮らしと結びつけて伝える編集力や接客力こそ、百貨店が培ってきた強みです。
この二つを進めることで、百貨店は世界のお客さまと地域の創り手をつなぐ媒介となり、新しい価値を共創する場になります。人と人、地方と世界、過去と未来をつなぐことで、価値は循環し、大きく育っていきます。
2026年、価値共創の場としての百貨店の役割は、これまで以上に大きな意味を持つと考えています。私もその仕事を楽しみたいと思います。
断絶を超えて「意味」の橋渡しができるマーケターへ
島川 基 氏
ネスレ日本
常務執行役員 飲料事業本部長
ネスレ日本
常務執行役員 飲料事業本部長
2025年は生成AIが身近になることで、色々な課題も見えてきた年だったのではないかと思います。その中で私が最も注目している課題が、「企業」「生活者」「AI」間での「意味」の断絶の解消です。
我々企業側は、「言語」を磨き上げ生成AIを活用することで、ブランド価値やストーリーといった「意味」を高速に大量に設計できるようになりました。
一方で生活者は、「非言語」、つまり短尺動画などアテンションを目的とした生成コンテンツの飽和により情報処理の余白を失い、ブランドの「意味」を深く解釈する機会がなくなっているように思います。
また、元OpenAI役員のイリヤ・サツキバー氏が昨秋に発言したように、生成AIは人間の価値観の揺らぎや文脈変容を理解できず、表層的な模倣にとどまるため、生成したものに「意味」が存在しません。
この結果、企業・生活者・AIの間で「意味」の非対称性が拡大し、従来型の広告モデルやブランディング手法が機能しなくなってきているように感じます。
人間としての我々マーケターの役割は、その断絶を乗り越える「Meaning Bridge(意味の橋)」となることではないでしょうか。すなわち、ブランド価値を生活者が認知負荷なく理解できる、五感を通じた「体験」へ翻訳し、各接点を横断して一貫したナラティブとして伝達することです。ゆえに、インフルエンサーやAIエージェントとの連携も、その統合コミュニケーションに内包されていく必要があります。
深い意味をつくり、浅く届きやすくし、長く記憶される文脈をいかに構築できるか。難しい時代になってきましたが、変化を楽しんで切磋琢磨していきましょう。




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