生活者の嗜好の変化でビール類市場全体が苦戦している中、大ヒットを飛ばしているのが赤いパッケージが印象的なキリンビールの新ジャンル飲料「本麒麟」です。2018年3月の発売以来、テレビCMに加えて、SNSを中心としたデジタルマーケティングを活用し、特にInstagram広告は費用対効果の向上を後押ししています。今回は、本麒麟の具体的な取り組みやInstagram広告の価値について、キリンビール マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当の森瀨夏実氏と Facebook Japan クライアントパートナーマネージャーの鈴木陽子氏にお話を聞きました。
Instagram活用で見えた本麒麟の生活者視点
――ヒット商品となった本麒麟は、デジタルマーケティングを効果的に取り組み、その中でもInstagramの活用は国内でも先進的だと聞いています。キリンビールのマーケティングにおいて、Instagramが果たす役割とは何でしょうか?森瀬 深いブランド理解まで繋げることができるのが、Instagramの良いところです。その理由は2つあって、ひとつ目はモチベーションの違いです。顧客のタイムラインにお気に入りの写真や動画が流れるなかで、自然とその人の好みに合わせて本麒麟を登場させられることができます。
2つ目はメディアとしての多面性です。Instagramは色々な顔を持っており、IGTVやストーリーズ、オーガニック投稿やインフルエンサー活用なども実施できます。動画の見せ方も切り口が多いため、同じブランドでも違った顔が見せられるという特徴があります。
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キリンビール マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当
キリンビールさんのInstagram活用は、クリエイティブへの気づかいがあり、手づくり感があって温かく、生活者がブランドを身近に感じられます。SNSが普及し、直接ブランドと顧客がコミュニケーションを 取れる環境ができたことで、「この商品がどうして美味しいのか」、「食事とどう組み合わせればいいのか」など、リアルな情報を伝えられるのです。
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Facebook Japan クライアントパートナーマネージャー
企業が積極的にSNSに取り組むことで、キリンビールから「キリンビールさん」になり、「本麒麟」から「本麒麟さん」になれるように感じています。これは他のメディアではできないことで、愛着を持ってもらえる企業として生活に溶け込んでいけたらいいなと感じています。
――実際に、Instagramを起用して、さらに変化したことはありましたか?
森瀬 広告想起やブランド好意度で、非常にポジティブな結果が出ました。
鈴木 これは私も驚きでしたが、広告想起ではコンシューマパッケージ(日用消費財)業界の平均と比べて1.7倍、好意度に関しては5.2倍も高いという調査結果が出たのです。
ブランドによっては、広告想起につなげるだけでも 時間がかかり大変なケースもあるのですが、好意度までもここまで向上できた理由には、キリンさんのクリエイティブへのこだわりと、生活者との接点のつくり方が大きいと思います。定点的にキャンペーン結果を計りながら、それをうまくPDCAにつなげていたと感じています。
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森瀬 クリエイティブの比較や検証は、かなりの量を行っています。当然、露出するメディアが異なれば、クリエイティブも変えます。コストがかかると、これを軽視する方もいると思うのですが、メディアごとに視聴態度などの指標を用いて、良し悪しを判断してきました。
Instagramの場合は、広告とオーガニック、インフルエンサー起用とストーリーズ投稿では、生活者が求めているポイントが異なるので、まったく違う見え方になります。
鈴木 クリエイティブも、テレビCMそのままではない、「モバイルファースト」の考えのもとに制作しながら、メッセージ面ではひとつのパターンだけでなく、製法にフォーカスしたり、テレビCMで起用したタレントのクリエイティブにしたり、「国際的なビールのコンペティションでの金賞5冠受賞」をメインに打ち出すなど、話題になる様々なクリエイティブを組み合わせた点が成功の秘訣だと思います。