海外で起きている、PR業界の潮流の変化
私はこの数年、審査員としてカンヌライオンズに参加していますが、近年の世界的な潮流のひとつに国連機関やNPO・NGOなどが積極的に推進しているSDGs(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)があります。そして、SDGsの普及には、世の中の空気をつくるPR的なアプローチがフィットします。
環境保護団体Plastic OceansとニュースサイトのLAD bibleが、海洋ゴミが招く環境破壊に反対するために行った「Trash Isles(ゴミ諸島)」。
ユニリーバによるセッションでは、人種や性別を含めてダイバーシティを意識したキャンペーンが成果を出したデータを明示していました。つまり、SDGsを推進したい国連などのパブリックな機関と、ビジネスを成功させたい企業の思惑が合致しているのです。そして、そこにPRの仕事が創出していると実感しています。
ところが、日本企業はまだまだそうしたキャンペーンが実施できていません。本来であれば、同じように仮説を立ててキャンペーンを回し、ブランドドリフトや売上との相関を見ていくべきなのですが、そこまでたどり着いていないのです。
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その理由は、日本企業が中長期的なブランドマネジメントよりも、目先の売上を重視したプロモーションに力を入れる傾向が強いためです。これは単純に企業側のマインドの問題であり、日本と世界の消費者の意識が違うというわけではありません。その証拠にインターネットの普及で、海外と日本の消費者が同じエンターテインメントコンテンツに熱狂するなど、垣根は低くなっています。
日本企業が売上をつくるためにソーシャルグッドな施策を始めるには、時間がかかるかもしれませんが、今後は強化していくべきでしょう。
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