クチコミや評価、SNS投稿のコメントを重視
中村 昨今、「広告」が嫌われているという話もありますが、コンテンツの出し方や内容、トーンなどがよければ、仮にそれが広告であっても受け入れてもらえると考えています。実際のところ、若者の広告に対する姿勢はどうなのでしょうか。
長田 たしかに、コンテンツの出し方や内容、トーンなどは重要です。若者は広告がすべてダメだとは思っていませんが、基本的によいことしか言わない広告を信じることはしません。SNSなどでクチコミや評価をたくさん見て、判断しています。
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中村 「広告を信じない」というキーワードは面白いですね。第1回でインタビューした足立光さん(ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクターCMO)は、話題化を目指したコンテンツをつくるときには、コミュニケーションプランニングの段階から、SNSでどのように話題にしてほしいかを考えるという話をしていました。
長田 それは、とても大事だと思います。今の若者は本当にシビアで、嘘の情報はすぐに見抜くし、リアルではないことに対する嫌悪感がとても強いのです。SNSなどにあるPR投稿の存在も知ってはいるけれど、そこで語られる一次情報よりも、その投稿に対するコメントに何が書いてあって、何にいいねが付いているかを重視しています。
企業に言わされていることよりも、投稿者の主観がすごく大事なんです。企業が発信したいことをクリエイターに言わせるのではなく、クリエイターに自分の気持ちや自分の言葉で伝えてもらうほうが若者には響くんです。
中村 もうひとつ「価値共創」という視点で考えたときに対話が重要になってくると思うんです。主観は重要ですが、一方通行的なコミュニケーションなので、そこに対話を通した双方向のコミュニケーションが生まれると熱量が高くなる気がします。
長田 絶対そうだと思います。109のSNSチームは投稿に対してコメントしてくれる人に返信したり、Instagramのストーリーで質問に答えたりするなど、双方向はすごく意識して運用していますね。
中村 話を聞いていて、「共創」以外にも「参加」や「体験」、「界隈」などのキーワードはマーケターにとってヒントになると思います。ただ、実際に事業の中で実行に移そうとなるとなかなか踏み出すことができない人がいるんです。そういう人は、どうしたらいいのでしょうか。
長田 たしかに、どこから何をどのように始めていいかがわからないケースが多いと思います。大企業ほど、小さい界隈から広げていくことに踏み出すのが難しい印象ですね。また、会社の構造的にも商品開発で素晴らしい商品やサービスをつくることができても、広告やプロモーションにその意図が伝わっていないと、売れない現象はよく起きていると思うんです。その組織の構造から変えて、ひとつの商品やサービスごとにプロジェクトチームを小さくするなどして実行したほうがいいですね。
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中村 もしくは、そのような場をつくってあげるとかも大事かもしれないですね。
長田 そうですね。実際に若者の生の声を聞くところに、商品やサービスに関わる開発やプロモーション、クライアントも含めて共通認識を持つことができるコミュニケーションが大事だと思います。