みんなが面白がってくれるものが好き
萩原 ここまでいろいろお聞きしましたが、明円さんは自分の好きなことをずっと続けられています。普段の業務でいっぱいいっぱいになる人が多い中で、それができるのはなぜなんですか。
明円 会社員人生をスタートするときに、給料をもらっているからにはどんな仕事でも頑張って取り組むけど、自分が本当に好きなものをつくる機会がないと自分の心が死ぬと思っていました。
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なので、入社するときから、土日に自分の好きなものをつくるというルールを決めていたんです。平日は会社の仕事をして、土日に自分のつくりたい好きなものをつくる。それによってクリエイターとして常にご機嫌でいられる気がするんです。展示会ものそのうちの一つです。不思議なもので、その土日に自主制作していたことが多くの人に注目してもらえるようになりました。
萩原 これを読んでいる人に、何か参考になることがあればと思って質問しましたが、自分自身のやりたいことはすべて土日を使ってやってみるといいかもしれないですね。
明円 そうですね。特に広告クリエイティブ産業は受託ビジネスなので、自分のやりたいことが後回しになりがちです。
私は毎年1月1日に1年間の「自分の企画」を立てるようにしています。それを月初にチューニングして、今月どうするかを考えようにしています。それをやらないと、ズルズルとずっと自分の好きなものが作れずに自分の人生が終わってしまう気がするんです。
萩原 ユニークな飲食店や展示会など、「自分の企画」を考えるときにはどういった想いで考えているんですか。
明円 私は昔から、みんなが面白がってくれるものが好きなんです。たとえば、展示会も「美術の知識がない自分でも楽しめる展示会をつくってみよう」といったテーマで企画してみました。その結果、老若男女問わずいろんな人たちが来てくれました。
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なので、企画を思いついたら、まずいろいろな人に企画書を見せに行きますね。そもそも、つくるかどうかを判断するときは「これをやったらみんな面白がってくれるかな」をいろんな人に聞くようにしていて、客観的な意見を聞くのを大切に決定しています。
萩原 たしかに、私も企画を見せてもらったことがありますね。最後に、読者のクリエイターやマーケターの皆さんにメッセージがあればお願いします。
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明円 つくるのが好きな人たちの業界だから、みんな多くのものをつくれるといいですよね。広告の施策が数値化されて均一化しがちな現代だからこそ、思いついたアイデアをつくり切ることがすごく大事だと思います。考えてつくりきるところまで取り組むことを私は「クリエイティブ&プロデュース」と呼んでいます。
萩原 たしかに。とにかくやってみることは大事ですね。
明円 それで仮にすべっても、話題にならないからみんな忘れていくだけです。今年の展望として「いい人すぎるよ展」を韓国でも開催しようと考えているんですけど、失敗してお客さんが集まらなくても、誰にも気づかれないですよね。
なので、挑戦してみようかなと考えています。ずっとこの感じで、大それたことはしていないんです。「思いついたら即つくる」をこれからも続けていくと思います。
萩原 素晴らしいですね。本日は、貴重なお話をたくさんいただきました。ありがとうございました。
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