企業全体で収益最大化にベクトルを向けるベンチャー気質
猿渡 実は、国内のほとんどのサッカークラブは赤字運営だといわれています。マネタイズは非常に大きなテーマですが、社内でマーケティング施策を進める上では、どのような点を工夫されているのでしょうか。
田河 ジャパネットでは、DX ツールを活用してデータを現場レベルまで見える化しています。それにより、各部署の実態をそれぞれがリアルタイムで把握することができます。たとえば昨夜、 ダイレクトアジェンダに参加されている皆さんに、 長崎スタジアムシティ内でオリジナルクラフトビールを醸造している「THE STADIUM BREWS NAGASAKI」でお食事とお酒を楽しんでいただきました。その実績もすぐに知ることができます。
猿渡 部門間の連携が仕組みとして、かなり構築されているのですね。大きな企業では、部門間の利益相反などが課題となったり、直接的な関係が薄い部署同士では連携そのものがうまくいかないこともあるようです。V・ファーレン長崎には全体最適を良しとするカルチャーがあるのですか。
田河 スタッフ全員がとにかく、長崎スタジアムシティ全体の収益最大化にベクトルを向けています。

「長崎スタジアムシティにお客さまが増えた方が、自分たちにとってもプラスになる」という発想が垣根を越えてあるのです。とにかく成果を出すことを意識した、いわばベンチャー気質のようなカルチャーがあるのかもしれません。また、組織の流動性が高いこともひとつの特徴です。実は月に2回、人事異動と昇格・降格する制度があります。
猿渡 経営者として全体最適を呼びかけることは簡単です。しかし私も自社で、部門間の障壁や仕組み化には難しさを感じています。私自身が採用やカスタマーサービスを深く理解することでバリューを浸透させることもしていますが、賞与の紐づけや比重の調整など具体的なモチベーションを仕組み化するのも重要なのかなと感じています。
田河 おっしゃる通りです。スポーツビジネスにおいて「集客」は1丁目1番地です。そのため、V・ファーレン長崎でも全体で「チケット販売はチケット担当部署だけの仕事ではない」という文化を意識させています。
具体的には、年間・半期ごとのスポンサー・営業チームのKPIは集客の評価点が分配されていて、広報にもチケット販売の評価指標が設けられています。このように組織として、全体最適が可能となる仕組みを構築しています。