継続購入するメリットを明確化した、新たなロイヤリティプログラム
―― 商品開発において、マーケティング部として意識しているポイントは何でしょうか。
商品開発は大きく「リニューアル」と「新発売」に分けられ、それぞれ目的が明確に違います。新しい顧客を獲得したいのであれば、既存商品のリニューアルだけでは不十分で、新商品の開発が必要になってきます。既存の顧客の満足度を上げることが目的であれば、リニューアルの優先度が上がってくると思います。
BASE FOODは主力商品の「BASE BREAD」に加えて、カップ麺タイプの「BASE YAKISOBA」も商品化され、カテゴリーや味が次々と増えています。リニューアルも新商品開発もやりたいことは非常にたくさんありますが、まずはマーケティングにおける目的を明確にし、事業全体を見ながら優先順位を決めています。

商品開発はマーケティング部が主導ということではなく、商品開発部(R&D部)と常に連携しながら進行しています。既存商品の「かんたん・おいしい・からだにいい」を引き上げるポテンシャルはまだまだあるので、R&Dは日々研究を重ねており、3つのポイントそれぞれがアップした商品をプロダクトアウトすることもあります。
私は2024年からR&Dチームにも関わっていますが、今まで以上にマーケティングとR&Dの間で活発に意見が交わせるようになっています。両方の視点を持ちながら、バランスを取ることが大事だなと思っています。

主力商品の「BASE BREAD」に加え、カップ麺タイプの「BASE YAKISOBA」などカテゴリーや味が次々と増えているBASE FOOD。
―― 直近、ロイヤリティプログラムを更新されましたが、その背景や狙いについて教えてください。
これまでも、ロイヤリティプログラムに近いランク制度がありましたが、「サブスクリプションを続けるほどお得になる」というメリットが打ち出せていないという課題がありました。当社には1年以上継続契約してくださっている顧客の皆さんが多くいらっしゃるんですが、そんな皆さんに継続によるメリットをきちんと提供できていなかったんです。
そのような課題感の中で、他社の事例も参考にしつつシミュレーションしながらつくったのが、今回のロイヤリティプログラムです。シンプルにいうと、「購入を続けるほど、マイルの還元率が上がる」という仕組みになっています。
これによりサブスクリプションを継続するメリットが明確になったと思いますし、実際、解約率が過去最低水準にまで下がるという大きな成果も生まれています。やはり長く続けてくださっている顧客の皆さんが解約しなくなるということは、事業・ブランドにとって非常にインパクトが大きいと考えています。
全体のLTVも上がりましたし、何より顧客の皆さんに喜んでいただいたのが本当に良かったなと感じています。ただ「マイルが貯まるからBASE FOODを続ける」というのは本質的ではないので、あくまでもご自身の健康のために購入を継続する顧客の皆さんに対してのメリットを提供し、より続けやすくなるサポートをしていきたいと考えています。
広告や小売店への展開をさらに強化し、BASE FOODをマスブランドへ
―― BASE FOODのマーケティングにおいて、安原さんが最も大切にしている考え方や軸を教えてください。
私が徹底しているのは、事実に基づいたマーケティングをすることです。「顧客はこんなことを考えているのではないだろうか」というような私自身の直感や感覚を、意思決定の基準にすることは絶対にありません。重視するのはデータとリアルな顧客の声です。
先ほどのカテゴリーエントリーポイントに間するヒアリングもそうですが、日々顧客の皆さんのリアクションを見ていると、私自身とはまったく異なる感想を持ったり、思いがけないリアクションをしたりすることに気付かされます。そういう時に「自分の感覚がすべてではない」と痛感するんです。今まで実際に見てきた顧客の行動や感想の組み合わせが、意思決定するときの私の軸なんだと思います。
事実をもとに考えることの大切さは今でも他のメンバーにも伝えていて、何かアイデアや企画案が出てきたときは「そう考える根拠」を聞くようにしています。

―― 2025年に、特に注力したいマーケティング施策などがあれば教えてください。
今後チャレンジするのは、BASE FOODをよりマスなブランドにしていくこと。そのためには、より多くの人の、より多くの生活文脈に入っていく必要があります。
これまでは、ダイエットに関心がある人など、狭いターゲット層にフォーカスして各種施策を展開することで、サブスクリプションの新規獲得を伸ばしてきました。しかし、今後も成長し続けることを考えると、顧客の幅をもっと広げていくことが重要で、より幅広い人にBASE FOODの魅力を伝えることに注力するべきだと考えています。タッチポイントとしても、今まで積極的には取り入れていなかった交通広告やテレビCM、OOH広告も含めて検討していきたいと思っています。
小売店への展開もさらに強化し、コンビニだけでなく、スーパーマーケットへと配荷を広げていきたいですね。スーパーマーケットの顧客の多くは、ファミリーやシニア層です。コンビニの顧客層とは違うファミリーやシニア層にとって、BASE FOODが生活文脈のどの部分でフィットするかはまだ未知数なので、そのあたりのニーズやインサイトを深堀りしていきたいと考えています。
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」というミッションを実現できるように、より幅広い顧客の声に耳を傾け、さまざまな施策を検討し、一人でも多くの皆さんに、一つでも多くのバリューを提供し続けていきたいと思います。

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