「データ」はAI、「哲学と感情的つながり」は人が受け持つ


― さまざまな意味でドモホルンリンクルとは異なるアプローチとなる「ポジティブリズム」事業によって、会社全体の予算や組織のあり方も変わりますよね。新規事業について社内の受け止めはいかがですか。また、ドモホルンリンクルでは「お客様プリーザー」と呼ばれるカスタマーサポートの重要性が高かったと思いますが、新規事業においては、人材とAIなどテクノロジーの活用についてどのように考えていますか。

 ドモホルンリンクルがワンラインから横に広げてこなかったこともあり、これまでにない本格的な新規事業について社内の理解が追いついていない部分は正直、あります。これまでの社内研修は製品の説明が多く、事業の根幹に関わる「哲学」を聞くのは初めてという人もいるため、浸透度にはバラツキがあります。そこは説明を重ねて浸透させていきたいです。

 当社の強みである「お客様プリーザー」については、このほどポジティブリズム専門の部隊ができ、従来のおもてなしの心に加え、生体リズムや漢方に関する専門知識、データ読解の基礎などを学ぶ分野横断的な研修プログラムを導入しています。私が見る限り、お客さまのデータをお預かりし、より良い暮らしにつながる製品や習慣をご提案できる新しい使命にやりがいを感じてくれているようです。現在、養生提案のサービスを利用してくださっているのはドモホルンリンクル以来のお客さまが多いですが、新規事業の商品についても、新たな信頼関係が築けてきていると感じる小さな成功事例が積み上がっており、まだまだ爆発はしていませんが、楽しみに感じています。

 テクノロジー活用については、AIは単なる効率化ツールではなく、共に未来を創造する「戦略的パートナー」と位置付けて投資しています。具体的には生成AIを用いて、膨大な漢方の文献や生体リズムに関する最新の研究論文を、お客さま一人ひとりの状態に合わせて要約・提示できるシステムを開発中です。これによってプリーザーが科学的根拠と漢方の知恵、そこにお客さまの情報を融合させた深くてパーソナライズされた養生提案を、対話の中で瞬時に行えるよう支援します。

 ドモホルンリンクルに依存はしないと言いましたが、それでもドモホルンリンクルで培ったノウハウは、やはり生きています。たとえば「お客さまに迷わせない」「長くお付き合いする」といったことです。ポジティブリズムの場合、お客さまにとってのベストな生体リズムが「最適解」ですから、そこに向けてプリーザーがきちんと「哲学」を語り、明確な根拠を持って普段の行動をアドバイスします。その中で効果的な商品をおすすめすることはもちろんありますが、近視眼的な営業ではなく、「哲学を伝える」ことを重視しています。これはドモホルンリンクルと同じです。理想は、複雑なデータ解析や情報整理はAIに委ね、社員は哲学を語ってお客さまと感情的なつながりを築き、倫理観を持って最終決定していただく、という人間らしい領域に集中できる環境です。AIが「データ」を扱い、人は「意味」と「哲学」を語る。この役割分担が未来の組織像です。

― 課題とされていた若年層への認知はいかがですか。

 まだまだチャレンジ段階です。可処分時間がどんどん少なくなるなかで、若い方に「自己回復力の哲学」を語り、理解していただくのは簡単ではありません。非常に難しい部分ですが、これも「長い目で見る」視野を提案するため、たとえば「自己回復力が100%でなく99%だったら、1年後には1だった生命エネルギーは0.03まで減っている」という考え方や、「眠気覚ましのコーヒーを習慣化してしまうとどれほどの出費になるか」といった具体的な数値を通して、日々の「自己回復力」を維持することの大切さを分かりやすく伝える工夫をしています。また、ヨガのインストラクターなどインフルエンサーに協力いただく施策も計画しています。今後はカフェなど、養生文化に気軽に触れられて話題にもなりやすい顧客接点をどんどん創出していき、「ポジティブリズム」や「生体リズム」というやや難解な概念を、誰もが楽しめる「体験」に翻訳することで、心理的ハードルを下げてファンを育んでいきたいと考えています。

ポジティブリズムの体験創出イメージ
※記事中の画像はすべて再春館製薬所提供
 
 ※再春館製薬所は3月17~19日、熊本市中央区のホテル日航熊本で開催される直販・通販事業に携わるマーケターが集うカンファレンス「ダイレクトアジェンダ2026」(主催:ナノベーション)にも、ドモホルンリンクル事業部 副事業部長 戦略支援グループの松嶋大和氏がスピーカーとして登壇する。
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