顧客を理解するために、人の力が必要になる
少し話を戻して、店舗スタッフの話をしましょう。店舗のスタッフと顧客との関係性というのは、ここでは書ききれないほど、様々なエピソードがありますし、リアルの場で培われる顧客との関係性は特別なものです。
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今、このお客さまは何に興味を持って、どのようなことが嫌いなのかなど、深かく理解するための情報は会話の中で産まれます。その一つひとつの情報を店舗スタッフの頭の中だけでなく、データベースへ蓄積していく作業が必要になるでしょう。
すでに多くのコールセンターでは、顧客との会話をデータベース化していっていますが、その作業をリアル店舗でも行う必要が今後でてくるはずです。その際は店舗で働くスタッフの体験も含めて”接客”の再設計が必要になると考えています。そして、それらが実現した結果、お客さまがより納得感を得られるはずです。
今後、間違いなくリアルの場というのは、とても贅沢な存在になっていくでしょう。「現場に答えがある」というのは、今もこれからも揺らぐことはない事実だと思います。
また反対に、リアルだけを考えていても顧客の理解は進みません。デジタルで拡張される世界はリアル店舗での一期一会だけにとどまらず、24時間接続できることでリアルの場で培われた知見を活かす意識と行動が必要でしょう。ビームスが行っているスタッフが自らのコーディネートを投稿するWEBのスタイリングやPARCOのアプリ「POCKET PARCO」などがそれにあたります。
日本の強みは、「温かさ」だと思っています。少し言葉にするのが難しいのですが、日本人は人との関わり合いをとても大切にします。これは海外の小売やサービスに見られるような「フレンドリー」とは、また違う感覚です。AIに変われない部分は何かをよく議論されますが、再現性の低いものは、やはり今はAIには難しい。ここは代替できない部分でしょうし、今後も人間が行っていく必要があると思います。
オズボーン准教授の論文が発表されたのは2013年です。すでにその時からは6年が経っています。すべての企業は今から我々が取り組まなければいけないことは何なのか、本当に考えなければいけない時期にきています。