注目の関西企業のトップが考える地方創生
地方創生とマーケティングというテーマで、連載を続けてきて一年が経ちました。前半は私の経験から、後半は関西にゆかりのある企業のトップに取材しました。中川政七商店の中川会長、剣菱酒造の白樫社長、WILLERの村瀨社長、近畿大学の世耕部長です。
皆さん、当然ですが、事業についてとても深く考え、そしてしっかりとしたビジョンをお持ちです。さらにお会いして感じたのは、皆さん楽しそうで、熱量も高いということでした。
今回は、連載の中から見えてきた「地方創生の捉え方」、そして「現代のマーケティングに必要なこと」をまとめてみたいと思います。
・中川政七商店十三代 会長 中川政七氏
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地方創生に必要なのは、地方のブランディング。中川さんのブランディングの定義は「伝えるべきことを整理して、正しく伝えること」でした。一社一社がブランド価値を高め、そして、その土地で一番の企業が輝くようになれば、他の企業も進出するようになる。
「定住人口を増やそうとしても、これからは人口が減っていくので意味がない。どこかが増えれば、その分どこかが減ることになる。しかし外から人に来てもらうという考えはある」
・剣菱酒造 代表取締役社長 白樫政孝氏
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その土地のお酒は、その土地の食に合う。そこに行かないと体験できないものがあれば、人は旅に出る。そうすることで地方が活性化する。大事なのは「東京になること」ではなく、自分たちの文化を伝えること。
・WILLER 代表取締役 村瀨茂高氏
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地方創生には、交通すなわち移動手段が重要になる。それは、そこに住む人の豊かな暮らしのための生活交通と、外から人を呼ぶ観光交通の2つ。豊かな暮らしとは、そこに住む人が行きたい場所にいつでも行けて、自分らしく生活できること。そして、観光に来る人にとっても、そこに行くことが出来なければ意味がない。
・近畿大学 総務部長 世耕 石弘氏
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24時間いつでも利用可能な図書室を学内につくるなど、学生に大学の近くに住んでもらう仕掛けをつくる。通学だけではなく、周りに住む学生を増やして街を活性化させたい。
中川さんと白樫さんは、交流人口(来てもらう)を増やすこと、そして村瀨さんと世耕さんは、加えて定住人口(住む人)も増やすことが大切だと考えています。いずれにしても地方創生に必要なことは、「人」だということが分かります。