完全栄養食の「BASE FOOD」を展開するベースフードは、ECサイトでのサブスクリプションモデルの売上を主軸に据えつつ、コンビニエンスストアなど小売店での売上も順調に伸ばしている。ロイヤリティプログラムの見直しなど、LTV(顧客生涯価値)向上施策の効果もあり、2025年度2月期の売上高は堅調に推移している。サブスクリプションサービスの解約率も低下し、過去最低水準に達した。

 ベースフードは、完全栄養食という新しいジャンルの認知を広げるために、どのようなマーケティングを推進しているのか。サブスクリプションの継続が難しいとされるDtoC市場において安定的に成長し続けるための戦略に加え、顧客の声をどのようにマーケティングに反映させているのか、ベースフード マーケティング部部長の安原祐貴氏に詳しく聞いた。
 

安定的な成長のカギは、オンラインとオフラインの相互送客


―― サブスクリプションの継続が難しいといわれるDtoC市場において、貴社が安定した成長を維持できている要因を教えてください。

 オフラインとオンラインの掛け合わせができていることが、成長し続けている要因だと考えます。ベースフードの商品は、ECのサブスクリプションモデルをメインとしながら、コンビニなどの店頭でも販売しています。

 売上構成比ではECが7割を占めていますが、コンビニでの顧客獲得にも注力しているんです。それは、市場への浸透率を上げることで、サブスクリプションモデルを利用するポテンシャルユーザーが増えるからです。
 
ベースフード株式会社
マーケティング部 部長
安原 祐貴 氏

 東京大学卒業後、株式会社リブセンス、株式会社リクルートキャリアで新規事業開発やWebメディア運営などに従事したのち、PwCコンサルティング合同会社(Strategy&)で、小売業や流通業の事業戦略策定/PMIなどに従事。株式会社BitStarでインフルエンサーマネジメント・P2Cブランド事業を管掌する執行役員を経て、23年にベースフード入社。マーケティング部を統括。

 市場への浸透率を高めるには、コンビニの棚にBASE FOODの商品が置き続けられる必要があります。そのためには、確実に「売れる商品」でなくてはいけません。

 コンビニは店舗ごとに顧客の属性が異なり、販促施策にはコントロールしづらい要素が多いので、ブランド認知向上のための広告投資と、顧客の関心を維持するための新商品開発にも注力しています。

 浸透率が順調に向上しているのは、こうした施策の効果に加え、「完全栄養食」というBASE FOODのベネフィットがコンビニユーザーのニーズと合致しているからだと分析しています。特に仕事の合間など時間が限られた状況でも手軽に栄養が摂れる利便性が、「コンビニ飯」というカテゴリーの中でも優位性を発揮できているのだと思います。

 コンビニというオフラインの場があるからこそ、ブランドの認知度や好意度の向上が加速し、結果として市場への浸透率が上がっていきます。さらに、ECの顧客がコンビニで定期的に購入しているケースも多く見受けられます。このオンラインとオフラインの相互送客が良い循環となっていることが、安定して成長できている理由だと考えています。
 

顧客の声でわかった「BASE FOODがフィットするシーン」


―― オフラインとオンラインの相互送客の良い循環をつくるために、注力していることはありますか。

 たとえば、商品に貼ってあるQRコードを読み込んでいただくと、LINEで友達登録ができるようにしているのですが、ここからオンラインのサブスクリプションにつながるケースも多く、LINEでのコミュニケーション方法を検証しながら、成約率の向上を目指しています。

 ただし、これは施策の一つでしかありません。コンビニで商品を購入していただいてからサブスクリプション契約に至るまでのカスタマージャーニーは非常に長く複雑です。コンビニでBASE FOODの商品を繰り返し購入するようになった顧客が、少しずつECでまとめ買いをするようになり、最終的にサブスクリプションにつながるーーこの長いジャーニーの全体を意識しながら、その中でいかに顧客との関係を築いていくか?を重視して施策を考えています。

 顧客と末長くお付き合いしていくという姿勢は、当社のミッションである「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」へとつながっています。健康は、1回・1日と短期で成されるものではなく、習慣化して初めて意味がある。私たちが顧客とコミュニケーションをとることで、顧客が自分自身の健康と向き合い、その結果として日常生活にBASE FOODを取り入れていただくのが理想だと考えています。
  

―― 商品開発やマーケティング施策を考えるとき、顧客の声をどのように反映していますか。

 商品開発やマーケティング施策は、大量のデータを見ながら決めていきますが、その一方で顧客の生の声もとても大事にしています。N=1の声を集めていくことで、非常に貴重な指標になると実感しています。

 今、「BASE FOODがフィットするシーンは何か?」というカテゴリーエントリーポイントを発見・開拓しているのですが、そこでも顧客の声が活かされています。たとえば、私たちはBASE FOODは朝食や昼食として食べていただいているイメージを持っていたんですが、実際にヒアリングしてみると「小腹が空いたとき」に購入している人が多いということが分かりました。顧客の多くが「おやつ以上、食事未満」という感覚を持っていたんです。これは意外な発見であったと同時に、少し甘味のあるミルク味のBASE BREADの人気が高い理由はこれだったんだなと、新たな気づきにもなりました。