次世代を担うマーケターが一堂に集う「ライジングアジェンダ2025」が2025年6月12~13日、東京都内で開催された。マーケティングの先輩が自らの経験と知見を語り、若手マーケターに学びのヒントを届けるセッション「This is my story」では、KDDI ブランド・コミュニケーション本部 副本部長の合澤智子氏が登壇。「『先読み力』ー経験社数1社でも、ダイナミックなキャリアを積み重ねるカギ」と題して講演した。
合澤氏は、新卒から現在まで一貫してKDDIでキャリアを積み、現在は150人が在籍する社長直轄のブランド・コミュニケーション本部のマネジメントに携わっている。経験社数は1社であるものの、その中でキャリアを充実させてきた合澤氏が、時代を先読みして挑戦の場に身を置き続けてきた自身のストーリーを語った。
合澤氏は、新卒から現在まで一貫してKDDIでキャリアを積み、現在は150人が在籍する社長直轄のブランド・コミュニケーション本部のマネジメントに携わっている。経験社数は1社であるものの、その中でキャリアを充実させてきた合澤氏が、時代を先読みして挑戦の場に身を置き続けてきた自身のストーリーを語った。

KDDI
ブランド・コミュニケーション本部 副本部長
合澤 智子 氏
1999年、現KDDI入社。
モバイルEC/ニュースEXなどモバイルコンテンツサービス企画を経て、2009年からはプロダクト企画に異動。au Design projectスマートフォン企画、プロダクトラインナップ企画に従事。
2017年に役員付補佐、2018年よりデジタルマーケティングの主に広告領域、のち宣伝部では、マス・デジタル全般のクリエイティブ企画、メディアプランニングを統括。2022年に宣伝部からコミュニケーションデザイン部に改称し、現在に至る。
ブランド・コミュニケーション本部 副本部長
合澤 智子 氏
1999年、現KDDI入社。
モバイルEC/ニュースEXなどモバイルコンテンツサービス企画を経て、2009年からはプロダクト企画に異動。au Design projectスマートフォン企画、プロダクトラインナップ企画に従事。
2017年に役員付補佐、2018年よりデジタルマーケティングの主に広告領域、のち宣伝部では、マス・デジタル全般のクリエイティブ企画、メディアプランニングを統括。2022年に宣伝部からコミュニケーションデザイン部に改称し、現在に至る。
夢中になることが、挑戦と成長につながる
KDDIは今年4月に社長が代わり、会社の目指すべき姿として「夢中に挑戦できる会社」を掲げました。
私は「夢中」って、いい言葉だなと思っていまして。脇目も振らずに集中して取り組むということだと考えているのですが、そうしていると新たな挑戦をしたくなり、自分自身もどんどん進化していくことができると思っています。
自分が今夢中であることを認識するのはなかなか難しいと思うのですが、振り返ればあのとき夢中になっていたな、成長したなと実感することはあるはず。ぜひ今後、夢中になって挑戦していってほしいと思います。
今回、自分のこれまでの軌跡を振り返り、「挑戦バロメーター」を作成してみました。そして、どんなときに自分のモチベーションが上がったのか、あるいは下がったのかを書き出してみました。

その中で今日は、後半の「プロダクト企画(スマホ・ラインナップ)」「役員補佐」「マーケティング(デジマ・宣伝・ブランド)」の三つをピックアップしてお話ししようと思います。
自ら手を挙げ、時代を先導するスマホに携わった
KDDIは、auなどのコンシューマーブランドだけでなく、BtoBのビジネスも手掛けています。私は入社当初、そのBtoBビジネスに携わっていたのですが、もう少しお客さまに身近なところでやりたいと思い、当時急激に成長していた携帯向けコンテンツの仕事に携わりました。たとえば、今では当たり前になっているモバイルショッピングサイトの立ち上げや、ポータルサイトの編集、ニュースやブログのサービス企画など、本当に幅広く経験しましたね。
そして、2008年頃に日本にiPhoneがやってきたことをきっかけに、スマホによってビジネスがとても大きく変わったのを覚えています。私もこの会社にいるのであればスマホの企画をやってみたいと思い、社内公募制度を利用して自ら手を挙げ、部署異動しました。それが私にとっての最初の挑戦であり、一つの大きな転換点でもありました。
携わったのは「au Design project(のちのiida)」。スマホメーカは各社とも当時は機能で差別化を図っていましたが、そこに情緒的価値を入れる事での差別化、デザインでの差別化を図った「INFOBAR A01」という機種の企画を行いました。
私が部署異動した理由もそうですが、皆さんも「次にこのビジネスが来るな」と先読みをするタイミングがあると思います。当社としても、これからは確実にスマホが来るなと先読みし、「人と同じモノを持ちたい、でも人とちょっとだけ違うモノがいい」というインサイトをくすぐる商品として「INFOBAR A01」を開発したのです。
外部の端末メーカさんやデザイナーさんと一緒につくっていったのですが、一つのゴールを共有し、信頼関係をつくったのが大きかったかなと思います。これによって「auDesign project」という新しい価値をつくることができたと思っています。
経営者の横で仕事をしたことで、目線が大きく変化
その後、社命によって、社長や副社長、専務などのボードメンバーに1年間付いて経営を学ぶ「役員補佐制度」というプログラムを受けることになりました。
ちょうどその時にグループリーダーにもなり、プロダクト企画の仕事が面白くなってきた時だったので正直迷いましたが、この様なチャンスはなかなかあるものではないので、新しいことを学べるいい機会だと思って飛び込みました。
そこで、社長に「君、『au Design project』をやっているんだって?」と言われ、「はい、頑張ってやっています」と答えたら、「そのプロジェクトが会社にどれだけ利益をもたらしているかわかっている?」と言われて。自分はすごく頑張っているし、みんなにも評価されていると思ってはいましたが、会社への利益貢献については即答できず、すごく落ち込んだことを覚えています。

「役員補佐制度」のプログラムでは本当に社長の横にピッタリと付き、経営がどのように行われているのかを日々勉強する1年でした。その時に、ブランディングが経営にどのような好影響をもたらすのかといったことを勉強した事を覚えています。それによって、今までは端末やデザインという小さな範囲に向いていた目線が、会社という大きな目線に切り替わり、自分の考え方も大きく変わりました。
今や定番となったauのCM「三太郎」の成功
その後、皆さんと同じようにマーケティングの仕事に携わるようになり、8年が経ちます。
テレビCM全盛期でいろいろなCMがあふれる中、CMを覚えてもらう、しかもauのCMということを認知してもらうのは非常に難しいことでした。その時、誰もが知っている日本昔話のキャラクターをベースに物語形式のCM、「au三太郎」というCMが誕生しました。
また、企業からの言いたいことを詰め込むのではなく、ワンメッセージでお客様からの信頼をつくっていくことも、コンテンツとして受け入れられたポイントだと思っています。「お客様が見て面白いか?」ということからブレずに企画をしたことが、お客様にも受け入れられた要因だと思っています。
しっかりとポリシーを持って、お客様との信頼関係をつくるということの重要性を学びましたね。
実績としても、9年連続でCM総研の評価No.1をいただいています。また、三太郎のCMを見ただけでauのブランドを想起してもらえるようになったことも、大きな実績だと思っています。
現在は、注目しているのはAIですね。スマホで時代が大きく世の中のビジネスモデルが変わったように、この先の10年はAIでビジネスモデルが大きく変化していくと思っています。皆さんにも馴染みのある、検索広告ビジネスもどんどん変わっていくと思います。
これからの世の中がどのように変わっていくのかを先読みし、思い描きながらキャリアを積んでいってもらえたらと思います。
チャンスは突然やってくると思います。夢中になって取り組んでいれば自分もどんどん進化していけると考えています。auは「おもしろいほうの未来へ。」というブランドメッセージを掲げているのですが、この先のおもしろいほうの未来を、ぜひ皆さんとも一緒に考えていきたいと思っています。
最後に、私はずっと一つの会社に勤めていますが、社数にかかわらず、どれだけ夢中になって自分の仕事を充実させられるかがキャリアアップにつながっていくと思います。そこでは、人のネットワークも非常に重要ですので、ライジングアジェンダのような場でネットワークをつくり、仕事の幅を広げていってもらえたらと思っています。
