世界5大広告賞のひとつ「London International Awards(以下、LIA)」が、9月25日~10月3日の9日間、米ラスベガスで開催された。「Created for Creatives(クリエイターのために創られた賞)」として1986年に創設され、今年40周年を迎えたLIA。広告、デザイン、パッケージデザイン、データ、テクノロジー、クラフト、ヘルス、ファーマ、ミュージック、PR、イノベーション、ストラテジー、B2B、ビジネス変革、ブランデッドコンテンツ、メディアといったあらゆる形態のクリエイティブ作品を審査対象とする。
LIAにおいて、アワードと並んでもうひとつの柱となっているのが、次世代クリエイターを対象とした招待制の教育プログラム「Creative LIAisons(クリエイティブ・リエゾン:以下、LIAisons)」だ。フランス語で「つなぐ」を意味する「Liaison」が名前の由来。2012年以来、世界中から選ばれた125人の若手がラスベガスに集い、トップクリエイターによる講義や、ワークショップ、実際の審査プロセスの見学、他国の同世代との交流を通じて、グローバルな視野とネットワークを形成する機会となっている。
このLIAisonsに日本から参加した若手クリエーターに、プログラムの内容や、体験から得られた気づきや学び、今後の仕事に役立てたいことなどを振り返ってもらった。今回の執筆者は、2021年に電通に入社したコピーライター・杉岡美奈氏。「この業界でがんばる人たちのことが好き。そんな人たちとこれからも一緒に働き続けるために、未熟な自分を日々鍛えながら、まだまだ足掻き続けたい」と話す同氏。その思いを新たにした、ラスベガスでの体験はどのようなものだったのか。
LIAにおいて、アワードと並んでもうひとつの柱となっているのが、次世代クリエイターを対象とした招待制の教育プログラム「Creative LIAisons(クリエイティブ・リエゾン:以下、LIAisons)」だ。フランス語で「つなぐ」を意味する「Liaison」が名前の由来。2012年以来、世界中から選ばれた125人の若手がラスベガスに集い、トップクリエイターによる講義や、ワークショップ、実際の審査プロセスの見学、他国の同世代との交流を通じて、グローバルな視野とネットワークを形成する機会となっている。
このLIAisonsに日本から参加した若手クリエーターに、プログラムの内容や、体験から得られた気づきや学び、今後の仕事に役立てたいことなどを振り返ってもらった。今回の執筆者は、2021年に電通に入社したコピーライター・杉岡美奈氏。「この業界でがんばる人たちのことが好き。そんな人たちとこれからも一緒に働き続けるために、未熟な自分を日々鍛えながら、まだまだ足掻き続けたい」と話す同氏。その思いを新たにした、ラスベガスでの体験はどのようなものだったのか。
自分のからだで実験してみる
はじめまして。電通でコピーライターをしている杉岡です。若手です。どうかお手柔らかに読んでいただけたらと思います。

杉岡美奈
電通 第1CRプランニング局
コピーライター
1999年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、2021年に電通入社。初任でクリエイティブ局に配属されて以来コピーライター。グラフィックやTVCM、ラジオを中心にSNS運用やステートメント開発など幅広い案件に携わる。ミナという名前は海外でも通じやすいという理由でつけられたが、特に海外経験なく暮らす。
電通 第1CRプランニング局
コピーライター
1999年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、2021年に電通入社。初任でクリエイティブ局に配属されて以来コピーライター。グラフィックやTVCM、ラジオを中心にSNS運用やステートメント開発など幅広い案件に携わる。ミナという名前は海外でも通じやすいという理由でつけられたが、特に海外経験なく暮らす。
最近、海外のクリエイティブが気になりはじめてきました。年次を重ねて経験を積むほど、事例からの学びが深く、面白くなってくるなかで、海外のワークからも刺激を受けることが多いなと気づきまして。言語は違えど、気になる言葉がたくさんあるぞと。
日本のコピーライターってあんまり海外に興味ないですよね、というと主語が大きすぎますが、だからこそ海外に飛び込んで学んでみたらどうなるか、ちょっとした興味がありました。ならば、自分のからだで実験してみよう!と思い立ち、今回ご縁があったLIAisonsへの参加を決めました。
私はありがたいことに、普段素晴らしい先輩方とたくさんのお仕事をご一緒させていただいており、海外アワードに応募する機会も何度かあったなかで、一度ちゃんと現地の様子を見ておくべきだなと思っていたのも、大きな理由です。
また、尊敬するコピーライターの先輩に「見聞を広める旅をするべき」と言われたことが心に残っていて。毎日ずっとパソコンの前に座り、目先の仕事のことで頭がいっぱいなのは、なんだか不健康だなあと感じていたので、狭くなっているであろう視野をストレッチできたらと。
参加が決まってからふと、英語が必要なことに気づきました。高校を卒業してからほとんど使う機会がなかったので、あわてて英会話のレッスンを申し込み、研修当日まで毎日受けていきました。純粋に語学の楽しさを思い出しながら準備できましたし、仕事の合間のいいリフレッシュになりました。
すべては情熱からはじまる
研修は全5日間のプログラム。うち3日は座学。加えて、ワークショップと審査見学の日がありました。

毎朝ホテルから会場(Encore At Wynn Las Vegas)まで歩いて向かいます。

LIAisons会場の様子。座学やワークショップはこの部屋で行いました。

世界各国のエージェンシーから一人ずつ、125人のヤングが集結。
座学は、CCOたちのパネルディスカッションからはじまり、PR、メディア、ストラテジー、ソーシャル、クラフト、ケースフィルムの作り方など、さまざまなテーマの講義が展開されました。
たくさんの金言がありましたし、印象に残ったことはそれぞれにあるのですが、どの講義にも共通していたのは、「情熱」の重要性でした。考え抜く力。巻き込んでいく力。実現する力。すべてを動かすのは情熱だと、世界のクリエイティブの最前線にいる全員が信じていました。
また、クライアントへの理解や、ビジネスそのものにもっと関心を持ったほうがいい、というお話も多かった気がします。クリエイティブの人材、特に若手は企画を考えることばかりにフォーカスして、その他に対する関心が低いという危機感があるのかもしれません。いいアイデアを売るために、いい関係性のチームをつくるために、どんなことにも細部にまでクリエイティブの力を注ぎ込むこと。エージェンシーがもたらすクリエイティビティについて考えさせられましたし、そこにいい仕事をつくるためのヒントがたくさんあった気がします。
この研修は次世代のクリエイティブリーダーを育てるために本気なんだと思いました。具体的なスキルではなく、心構えをインプットする。同志を育てる。新しい文化をつくり、戦える人材を輩出させる。そんな意気込みを強く感じさせるものでした。
「情熱の持ち方は、残念ながら教えられるものではない」というお話がありましたが、その熱量はやはり伝播するものです。情熱は人の心を焚きつけ、意識を変え、行動を引き起こせるパワーがあると、講義全体を通して、身をもって学びました。

講義自体も大きな学びでしたが、一流のストーリーテリングを拝聴できるのが本当に幸せでした。

自分たちCCOの仕事は「文化を形作る戦い」だと。最高にかっこいいですよね。
爆速企画術 Crazy8
ワークショップは10人ずつのチームに分かれて企画、プレゼンするというものでした。午前中にクライアントから直接オリエンがあり、ブリーフもその場で発表。今回はWestfieldとディズニーのダブルクライアントでした。
ブリーフを簡単に紹介しますと、Westfieldはオーストラリアを中心に展開しているショッピングモール。買い物を超えて唯一無二の体験を提供するブランドで、ディズニーとはIPコラボの施策をいくつか展開した実績があります。
SNSが発達するほど、人と人の間に距離が生まれているのではないか。そんなソーシャル時代に、Westfieldが “ソーシャル” 本来の楽しさを取り戻すためのアイデアを提案してください、というお題。
条件は、①インスタにアップしやすいキャッチーさ+拡散性が見込めて、長く使えるフィジタル(フィジカル×デジタル)な仕掛けであること、②ディズニー作品のモチーフやナラティブを掛け合わせること。・・・どうでしょうか。実際、両社はもうすでに手を組んで施策を展開しているとのことで、かなり実践的なお題だなという印象でした。
問題はどうアイデア出しをするか、ということなのですが。まずは個人ワーク。8分間で8つアイデアを出す「Crazy8」というブレスト手法を、切り口を変えて3セット。そして、一人ずつ自分のアイデアをチームにシェアし、全員のアイデアをテーブルに並べる。好きな案に投票し、多数決でコアアイデアを固める、というやり方。
なんと強引な企画術!!でも限られた労働時間のなか、すばやく大量のアイデアを出すことが海外では主流なのだろう・・・と自分を納得させ、よし、なんとかついていくぞ!と周りを見たら、結構みんなついていけてなかったです(笑)
この手法がベストなのか?と首を傾げつつも、みんなで必死に頭と手を動かして、爆速で仕上げていきました。結局1時間でブレスト→1時間で資料作成→プレゼンという異常な進行でしたが、加圧トレーニングとしては良かったのかもしれません。いいアイデアはシンプルな言葉で説明できるだろうと高を括っていたのですが、まあそう上手くはいかず・・・英語うんぬんの前に実力不足を感じました。

みんなのアイデアを並べて、あれこれ意見。

プレゼン資料もみんなでつくる。テーブルの中心には、アイデアメモが大量に。

プレゼンの様子。
ちなみに私のチームは、スターウォーズのフォースを操るようにショッピングできるインタラクティブな体験をつくる、というものだったのですが、なんと別チームとアイデアかぶり。簡単に思いついてしまうアイデアを提案するのは罪だなとあらためて自戒。
普段の自分の仕事においても、もし別の誰かが同じお題で考えたとしたらどうだろう、と思考するのは凡庸を回避するのにとても重要だなと思いました。その視点を養う意味で、コンペの参加は大事だなと。表彰された数チームのアイデアは、インサイトが光っていたものが多かった印象です。




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