マーケティングが経営判断の精度高めるレーダーに
内山 妙子 氏
カンロ 常務執行役員 マーケティング本部長
カンロ 常務執行役員 マーケティング本部長
2026年に向けて、マーケティングの役割は「伝える機能」を超え、企業の価値創造そのものを担う領域へと、さらに広がっていくと考えています。生活者との接点が多様化し、行動データと感情データが蓄積される中で、マーケティングは商品開発にとどまらず、事業設計や組織づくりにも深く関与する存在になりつつあります。
AIの進化によって効率化や最適化は進む一方で、「なぜそのブランドが選ばれるのか」という意味づくりの重要性は、むしろ高まっています。その一翼を担うのが、マーケティングの民主化だと考えています。生活者がブランドづくりに参加する流れは一層加速し、SNSやコミュニティを通じて、生活者は単なる受け手ではなく、企業とともに価値をつくる共創の担い手になっています。
こうした動きは、マーケティングを後工程ではなく、生活者の変化をいち早く捉え、経営判断の精度を高めるレーダーとして位置づけるものです。生活者との共創は事業開発の不確実性を下げる経営資産となり、企業広告を含めた一貫したブランドづくりは、環境変化に耐える企業の持続力を支えていく。2026年は、マーケティングが経営と社会をつなぐ中核的な役割を担う一年になると見ています。
自社のコアを問い直し、AI・デジタルと向き合う年に
鎌田 滋之 氏
サンマルクホールディングス
執行役員 マーケティング本部長
サンマルクホールディングス
執行役員 マーケティング本部長
2025年は、OpenAIやNVIDIAといったAIに関連する企業のサービスや株価に関する話題だけでなく、AIの覇権争いから国家安全保障に関わる問題、米中の貿易戦争にまで発展するなど、AIが国家レベルのテーマになりました。
また、投資会社のブラックストーンが投資検討書類の最初の数ページで「AI時代を乗り切れるのか」などのAIリスクに焦点を当てていると述べているように、ビジネス領域においてもAIは不可欠な要素になりつつあります。
マーケティングアジェンダでAIがテーマとなっていたように、マーケティング領域においてもAIの活用について議論され始めましたし、実際にAIに関連する新しいサービスが雪崩のように数多く生み出されました。
この潮流はさらに激しさを増し私たちの生活を変えるでしょう。そしてマーケティング領域においても、間違いなく2026年は、AI活用とさらなるデジタル化の波が押し寄せるのではないかと感じます。皆さまも同じ思いではないでしょうか。
しかしながら先日、そんな大きな流れに抗うかのようなニュースが報じられていました。韓国では2015年からデジタル教科書を解禁し、2025年3月からAI搭載型教科書の導入を始めたそうですが、「知識の定着には手作業が大切」といった声が教育現場で挙がり、デジタル化への揺り戻しがあって、国会においてAIデジタル教科書を「教育資料」に格下げする法改正案を可決したそうです。
また、デジタル先進国として知られるノルウェーにおいても国際学習到達度調査で順位が低下しており、政府の報告書において「長文を読む時は紙の本が重要で、デジタル機器は避けるべきだ」と述べ、経済協力開発機構の報告書においても「紙で本を読むことがデジタルよりも頻繁である生徒は読解成績がより高い結果となった」と指摘するように、デジタル化に対する問題点が出始めました。
飲食・リテール分野においても、デジタルメニューパネルの持つ問題点に気づき、廃止するところが出始めているのは、こういった揺り戻しとつながるものがあります。
また私の前職であるスターバックスが、駅の店舗で実験的にセルフレジを導入することが先日ニュースになっていました。これだけ見ると、スターバックスもデジタル化の動きを始めているだけに感じるかもしれません。しかし、店舗のバリスタのホスピタリティが強みであるブランドだけに、その武器を自ら捨てることになるリスクもはらんでいることから、社内において激しく議論されたのではないかと想像します。
デジタル化やAI活用は、ある企業にとっては効率化を促進させるものとして諸手を挙げて受け入れられる一方、逆にある企業にとっては自らのコアを失うリスクをはらむため、議論が必要になるのではないかと考えます。
人の温もりの価値に気付かされる年であり、世の中のトレンドだからと鵜呑みにせず「企業が何を目指し、何を届けたいのか?」や、自社のコアや強みなどを今一度見つめ直し、問い直しながらデジタル化やAI活用とどう向き合うかを考えさせられる。そんな2026年になるのではないでしょうか。




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