ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #04

世界最大手食品スーパー Kroger最新アプリの将来性と、日本の小売業が学ぶべき多くのチャレンジ

前回の記事:
世界NO.1食品スーパー Krogerの最新アプリを使って見えた改善ポイント

多くのカメラが店内に設置されている狙い

 前編と中編で紹介してきた、「Scan,Bag,Go」の技術要素から紹介していきます。

 ・デジタルシェルフ用ハード
棚上に設置されている表示管理用ハードが現時点では大きく、あまりスマートではありませんでした。しかし、これは早期に解消されるでしょうし、顧客には関係ありません。


 ・棚真上の4眼×2連カメラ

 「Scan,bag,go」の棚真上に写真のような特殊カメラが設置されていました。カバー範囲は広そうですが、構造的に深度センサーなどのない単純なRGBカメラであり、顧客行動把握にはこれだけでは難しいものです。

 仮説① 顧客行動取得
顧客行動分析が目的であれば、アプリとEDGEに表示してちゃんと棚に近づけるかの検証でしょう。目的が店内動線分析だとしたらデジタルシェルフ対象コーナーにしか設置されていないので不十分です。

 仮説②棚状況の監視

おそらく、こちらの用途だと思います。米国の店舗の広さを考慮すると、欠品補充を効率的に行うことでの機会損失を減らす収益効果は期待できます。ましてや買い物リスト商品は顧客が買うつもりの商品なので、来店する前にキッチリ補充しておきたいところです。また、欠品状況をリアルタイム監視して、欠品した商品位置は売価ではなく、次回入荷予定を表示するだけでも利便性は向上します。

■運用課題

 現在は全ての棚がデジタルシェルフであるEDGEになっているのではなく、普通の紙プライスカードの売場と半分半分です。この影響もあるかとは思いますが、運用で残念な光景がありました。

 欲しい商品の場所を見つけやすくする機能なので、次の写真がイメージ通りです。

 実はこの画像は、私が紙プライスカードの位置を貼り直して撮影したものです。実際の売場で見た光景は、次のようでした。つまり、プロモーション商品はデジタルシェルフに足して、紙でアピールしようという売らんかな意識です。これが現場では必ず発生します。

 日本でも単純なデジタル値札システムを導入しているスーパーは数多くあります。しかし、大抵の実運用はこうなっているのですよね。システム設計をしているベンダーや開発部門が見落としているのはこういうことなのです。現場で何が起こるかは、顧客の目線で体験しないとわからないものです。つまり、デジタル改革には、運用の改革も不可欠なのです。

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