ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #04

世界最大手食品スーパー Kroger最新アプリの将来性と、日本の小売業が学ぶべき多くのチャレンジ

アプリに将来性はあるのか

 クローガーとマイクロソフトという巨人が組んだ売場とアプリが連動する最新の試みですが、現時点の実用性には疑問が残ります。このままの形では投資に値しないでしょう。

 ただし、ここまでで記載したとおり、

・探しやすさ向上
・欠品対策によるLTV向上

に大きな可能性がある仕組みであり、有意義なチャレンジだと考えます。
 
 「エンド陳列などでは、棚に近づくとEDGEに二次元コードが表示され、クーポン利用ができる」という話でしたが、私が端末を変えつつ2日間検証した範囲ではまだ実行されていませんでした。

 しかし、買い物リストだけでなく、顧客の購買履歴・滞在時間などに連動してエンドのEDGEが演出するというようなOne to oneもできるハードであると感じました。

 私が体験した翌週にScan,Bag,Goアプリはアップデートされて、セルフレジでの操作なしでもアプリ内決済が出来るようになりました(要北米クレジットカード)。セルフレジコーナーに常駐しているスタッフに決済画面を見せる運用が追加になるわけなので、スタッフ業務が複雑化します。必ずしも効率的ではないとは思いますが、トライ&エラーのスピードが速いです。

 やらないとわからないことがどんどんクリアになっていくわけですので、今後に期待します。



■その他のクローガーの取り組み
・QueVision:レジ待ちとサポートの可視化

 「QFC(Kroger)」の店内・天井には、そこかしこにカメラが存在します。これは防犯という目的だけではなく、前述の技術と組み合わせて顧客行動分析に使われていくと推測しますが、明確な用途がもう一つあります。それはレジ待ちストレス解消です。

 写真はレジ後ろ壁面にあるディスプレイです。3つの丸が並んでいます。左の数字が現在、解放されている有人レジ台数、真ん中が開けることが望まれる有人レジ台数、右が30分後に解放するべきであるレジ台数を表示しています。

 これは顧客向けではなく、レジおよび店内にいる従業員向けの情報表示です。クローガーはこのシステム導入によりレジ待ち時間が大幅に短縮し、サービスが改善したと公表しています。

 実際に長い時間かかったレジ待ちはなかったと感じましたが、私は実計測もしませんでしたし、2日(計3時間)では評価しきれません。待ち時間の見える化による従業員意識の向上という効果もあるでしょうし、有効な仕組みと考えます。

・カーブサイドピックアップ(Curbside Pickup)

 アプリから事前注文した商品を店舗スタッフが指定時間までに揃えておき、顧客は店舗まで行って一括でピックアップする仕組みです。いつも買う商品はこれで買い物の時間を省くことができ、実物を見たい商品だけを店頭で選ぶことで時間の節約ができるわけです。顧客からすると好きな時間に取りに行くことができて宅配便待機する必要がなく、店舗はネットスーパーのように宅配コストをかけずに売上が確定できるメリットがあります。

 特にクローガー独自の取り組みというわけではなく、店舗売場が巨大で宅配品質が低い米国では日本よりも普及しているサービスです。


 世界No.1食品スーパーの取り組みということでかなり盛りだくさんになってしまいました。

 次回以降は、世界No.1ホームセンターHomedepotの最強顧客体験、Walgreenで目撃した最新サイネージ飲料棚、AmazonGoの最新アップデートや類似スタートアップの現実、物を売らない店舗b8ta2店舗などを体験したレポートを、時には日本企業と比較しながらしていきます。
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