ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #05
Googleも出品。知る人ぞ知る、店頭の商品が売れなくても利益が出る米国の注目店舗「b8ta」
日本にもお手本にした店舗、b8taの類似モデルに可能性はあるのか
b8taでは、ダッシュボードなどの機能提供、店頭での商品説明といったことは自社で行っています。しかしながら、店舗の行動解析は小売向け店舗解析ツール「RetailNext」と提携しており、自社の強みというわけではありません。一般の小売業でもAI画像解析系の技術を持つ企業と提携すれば、同様の仕組みを店内にLowe’sのように展開することは可能です。
ショッピングセンターをはじめとしたビジネスはもちろん、店舗の広い小売業でも同様の仕組みでマネタイズする会社が出てくると予想します。また、自社商品においても同様の分析を行うことが可能です。
実際に、表参道に2月14日から3月11日の期間限定で「adpt」というb8ta型の店舗が出店していましたので、こちらも体験してきました。
店舗自体は以下のようなもの(いずれも筆者撮影)です。
店員さんにインタビューしたところ、やはりb8taを手本として出した店舗だそうです。b8taとの違いとしては3点あります。
- 期間限定店舗 ― 実験という意味合いが強いと推定します。出品企業が価値を見いだせば、常設店もいずれ出るかもしれません。
- 技術仕様 ― 天井に顧客行動測定カメラはなく、写真にあるように市販のWebカメラでの滞在測定でした。精度は、ともかくまずはやってみるということだと考えます。
- 接客時にカードの配布 ― b8taは客が話しかけないと接客しないスタイルですが、adptは手隙の店員さんが声をかけてくる形態でした。渡されるのは店舗情報のカードですが、ここからネット購入の動線が用意されているわけです。期間限定店舗が閉鎖した後の動線を確保する必要があるので、これはマストな取組みですね。
国の壁を越える体験提供
b8taは、日本で動画ショッピングサイトを運営するDiscoverと業務提携しました。提携の目的は、「製品開発を行う日本のスタートアップ企業に、米国での販売機会を提供するため」であり、日本のベンチャー企業がアメリカで実物を体験してもらいながら、販売することも可能な時代になりました。つまり、このタイプの店舗は国の壁を容易に飛び越えて体験を提供できるわけです。スタートアップ製品をもつ日本企業は、「b8ta」でのオフライン販売に加え、動画ショッピングサイトDISCOVERのライブコマース機能を活用することにより、視聴者へのリアルタイム購入が促せる等、販路拡大が可能となります。また、本パートナーシップにより、DISCOVERで「b8ta」の製品の取り扱いも始まりました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000158.000022027.html
パッケージのABテストどころか、国別ABテストも月数十万円の費用でできるのですから、既成概念にとらわれないチャレンジをするところと従来型の取組前年比しか見ていないところで、今までよりも一層速く勝敗が分かれそうです。
今回は以上です。b8taのような従来にない店舗は漠然と視察しても、何も学び取れないものです。場の価値と店舗の目的を改めて考え抜く必要がありますね。
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