PHOTO | 123RF
ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #06

Amazonに負けない、年商12兆円 世界最大ホームセンター「ホーム・デポ」が新規出店よりもデジタルに投資する理由

EC(ONLINE SALES)は絶好調だが、財務影響は軽微

 

 2018年、ホーム・デポのオンライン(EC)売上高は、前年比24.1%成長しました。とはいえ、そのオンライン(EC)売上は全体の7.9%しか占めておらず、ECの売上が全体の収益を押し上げる効果は2%もありません。しかし、ホーム・デポ全体では7.2%も売上が伸びました。つまり、リアルな店舗での売上も伸びているということです。

 この間、新店はアメリカ1店舗、メキシコ2店舗のみです。新店の影響は多く見積もっても0.1%強です。ではなぜ、Amazonの影響が最も大きく、閉店ラッシュが話題になるアメリカ小売業で、リアル店舗での売上増加を実現し、業績を上げることができているのでしょうか。そのヒントは、同社のレポートにあります。
 

オンラインの成長が全体の成長へ


 ホーム・デポは、「ANNUAL REPORT 2018」の中で以下のようにうたっています。ちなみにこのレポートで「interconnected」という単語が22回も登場します。
 
 Delivering a best-in-class interconnected shopping experience encompasses more than our digital properties and physical store assets.

 意訳すると、

 私たちは、単なるデジタル資産と実店舗資産以上の、最高に(オンラインと実店舗が)相互接続された購買体験を提供します。

 「相互接続された購買体験(interconnected shopping experience)」についての説明が続きます。抜粋をまとめました。
 
 相互接続した体験:実店舗からオンラインへ、オンラインから実店舗へ(Interconnected Experience: Stores to Online, and Online to Stores)

 顧客は、数年前とは違った方法で買い物をし、私たちと対話しています。私たちは顧客に(オンラインと実店舗の)継ぎ目が無く、摩擦のない相互接続を提供するために多くのステップを踏みました。

●顧客に合わせたパーソナライズメッセージ
・購入履歴活用とレコメンド。
・気象条件の変化に基づいた提案。
・マーケティング活動とオンラインおよび店内での経験を結びつけて、すべてのチャネルにわたるシームレスな一連の体験提供。

●実店舗の利便性向上
・スタッフのスマホ所持。
・オンライン注文のチェックアウトプロセスの迅速化。
・通路内およびオンラインでの製品特定と在庫確認。

●One Home Depot Supply Chain
・商品を棚、サイト、および顧客に接続するもの。
・店舗商品の98%以上を集中的に予測し、補充する在庫管理。
・店舗と顧客の両方のニーズに応えるために、200以上の物流センターに加え約2000店を便利なネットワークとして活用。

 ホーム・デポは2017年度末、これらに複数年に渡って110億ドルを投資すると公表して、実行に移しています。従来の小売業であれば、新規出店に当てる以上の規模の投資額をデジタルに寄せているのです。

 つまり、ホーム・デポは、オンラインとオフラインを融合させることで、次の3点を改善し続けています。

①顧客に合わせた最適なメッセージを送り
②店舗および自宅(オフィス)での利便性を向上させて
③顧客に便利かつ効率的な物流のネットワーク化

 その結果として、ECを伸ばすのはもちろん、より財務インパクトの大きな既存実店舗の売上を伸ばすことに成功しているのです。

 続き(5月公開予定)では、実際に投資された結果として、店舗でどのような体験が提供されているのかをレポートします。
他の連載記事:
ニュースと体験から読み解くリテール未来像 の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録