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ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #07

日本は本気でオムニチャネルに取り組んでいない、世界最大ホームセンター「ホームデポ」から受けた刺激

前回の記事:
Amazonに負けない、年商12兆円 世界最大ホームセンター「ホーム・デポ」が新規出店よりもデジタルに投資する理由

5年前のホーム・デポは、どうだったのか


 今回は、前編で紹介した世界最大のホームセンター「ホームデポ(Home depot)」におけるアプリを使った買物体験をお届けします。

 筆者がホームデポを視察したのは、2015年1月以来です。その前は、2014年10月でした。デジタルトランスフォーメーションを始めていた当時がどのような状況だったかから振り返ります。



 5年前の時点で、品名はもちろんバーコードからの商品検索、検索した商品の店舗扱い状況、在庫店内マップといった機能は全て実装されており、行こうとしている店舗にはない在庫を近くの店舗で確認するといった“痒いところ”に手が届いていました。当然、自宅配送も倉庫・他店舗からの在庫取り置きも実現しています。



 実際には、店頭でこの体験を実現するためには、単にテックベンダーがアプリを開発しただけではできません。

 前提として、店舗ごとの棚割(どの棚にどの商品を並べるかを規定し、その通りに実行すること)が本部管理でコントロールされ、バックヤードも含めたロケーションとサプライチェーンの管理ができているからこそ実現できることです。

 ちなみに、在庫反映は、この頃からリアルタイムで更新されています。アプリで確認した在庫数をレジ通過後に確認すると、しっかり減算されていました。

 以上は5年間の話です。さて、現在これだけのことをやりきっている日本企業は何社あるでしょうか?

 よく言われる台詞で「アメリカ小売業で起こっていることが数年後に日本で起こる」というものがありますが、数年ではきかないのかもしれません。

 ホームセンターの利用シーンを一つ考えてみます。
 
① 週末にDIY(Do It Yourself)で犬小屋づくりをしようと思う。
② 必要な部材の有無をネットでチェック
→あるものは確保し、不足しているものは取り寄せを依頼する。
③ 土曜に店舗で受け取る。また、ペンキなど、自分の目で確認して買いたい商品を店舗で買い足す。

 3000坪の売場で、何時間も懸命に探しても部材が揃わず、そのうちに面倒くさくなって完成しない犬小屋と、スムーズに部材が用意できて完成に至った犬小屋とでは、どちらが飼い犬と飼い主にとって快適でしょうか?

 必要なものが、必要な時に、必要なだけ手ごろな価格で手に入るからホームデポは支持されているわけです。しかも、その情報が店舗に行く前でも調べられて、広い店内のどこに置いてあるかも簡単にわかる。棚割りと在庫管理のレベルが高いから実現できている顧客体験なわけです。

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