関西発・地方創生とマーケティング #13
中川政七商店、剣菱酒造、WILLER、近畿大学 関西ビジネスリーダーが語った「地方創生とマーケティング」
2019/06/06
自分たちだけで完結しない
自分たちだけではなく、積極的に外部の意見を取り入れています。例えばクリエイティブディレクターの水野学さん、ブックディレクターの幅允孝さん、編集工学研究所の松岡正剛さんなど、様々なプロフェッショナルをパートナーにしています。そこから関西のビジネスリーダーの感度の高さと、人脈の広さが伺えます。
またWILLERでは、社員だけで企画を考えることより、自分たちは旅行の幹事のようになり、お客さまやパートナーと一緒に考えることを大事にしています。さらに各社、マーケティングやデジタルの専門家を採用するなど、時代の変化に対応した人材戦略を打ち立てて実行しています。
これらは、地方に限った話ではありませんが、地方だからこその強みを発揮しているように思います。ネットによって情報も届けやすく、また物流も発達してECによって商品自体も届けやすくなっています。特に歴史ある企業は、地方の特色をより持たせることが強みになるのではないでしょうか。
ビジョンが何よりも大事になる!
そんな方々ですので、ビジョンについてもしっかりとお持ちです。
中川政七商店のビジョンである「日本の工芸を元気にする!」は、中川さん自らが3年間にわたり考えたもので、最終的には「will」「can」「must」が重なる必要があると気づいたそうです(詳しくは、こちらをご覧ください)。
同社の強みは「ブランドをマネジメントする力と、誰も実現できていない工芸メーカーの再生を掲げていることによる差別化」にあり、成長する上で大切だったのが「工芸の再生」というビジョンであったということです。
また、剣菱の数百年に渡って守られてきた家訓は、本質からずれないためにあると言います。その一つが「止まった時計でいろ」です。流行を追い、流行についていこうとすると、どうしても一歩遅れが生じます。そして、遅れている時計は、1日に1度として時間が合うことはありません。しかし、止まっている時計は1日に2度、ぴったりと時間と合う瞬間が訪れます。
「お客さまの好みは時代とともに移るけど、必ずまた戻ってくる。だから、自分たちが自信を持つ味をしっかりと守り続けなさい」という意味が、この家訓には込められています。
ただ、止まったままでいるということは、決して何もしないということではありません。例えば、海の上の舟が同じ場所に漂うことは難しく、何もしなければ波に流されてしまいます。常に漕ぎ続け、風を読む必要もあるのです。
一方で、WILLERは、約10年ごとにビジョンを変えています。その理由は「ビジョンがずっと同じだと社員に思い込みが生まれて、お客さまの顔を見なくなる」からだそうです。草創期に戻り、チャレンジ精神を呼び覚ますために、あえて変えているそうです。
何れにしても、その時々で拠り所となるビジョンが社内できちんと共有されているということが大切なのだと思います。そして最後に、取材を通して感じたのは、皆さん地方に限らず、結局どこの場所であっても成立するであろう、普遍的なことを大切にし、追求されているということでした。
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