ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #09
トライアルのスマートレジカートに学ぶ、店舗が「客単価」を上げるためのヒント
非計画(衝動)購買を促すのか?阻害するのか?
買い物には、いわば作業として必需品を補充する「計画購買」と、入店する前は買うつもりのなかった商品を結果的に購入してしまう「非計画(衝動)購買」があります。
非計画(衝動)購買は、次の4つに分けることができます。
- 売場・商品を見て、急に欲しくなる純粋な衝動購買
- 必需品を思い出す想起衝動購買
- 店員やPOPの推奨による提案受入衝動購買
- 店内の特価やクーポンなどで購入予定品目を決定する計画的衝動購買
店頭で非計画購買を促すことができれば、客単価のアップにつなが
様々な小売業が人手不足の文脈で、買い物客自らがスマホアプリでセルフスキャンして決済する取り組みを始めています。これは「Amazon Go」のようにハード面に大規模な投資が必要ではなく、今ある既存システムに追加することで始められるからです。ただし、買い物客の立場からすると、大きな問題があります。
ひとつは、買物中にスマートフォン画面で商品のバーコードをスキャンする作業が購買ごとに発生するので、その度に意識がリアルな店舗の世界からヴァーチャルな世界へと移動します。つまり売場と商品を見ることに集中出来なくなるので、①の純粋な衝動購買が発生しにくくなります。つまり、買い物が楽しくなくなるということで、小売業としてクリティカルな問題です。
さらに、コンビニエンスストアをはじめ、あまり買い物カゴを使わない低単価業態との相性が悪いです。スマートフォンで片手が塞がるということは、必然的に買上点数が減りやすくなります。
トライアルの場合、買い物カートにスキャナーと買い物状況を表示するタブレットが固定されているため、この2つの課題が解消されています。
当然のことですが、手元にスキャナーがあるので、スマートフォンよりもスキャンがしやすく、手も塞がりません。また、スキャンした際、画面に関連商品やお買い得な商品を提案することが可能で、非計画購買の②③④を促す可能性を持っています。
筆者も実際にお茶のペットボトルをスキャンした時に、トライアルのプライベートブランドがポイント5倍というオファーが表示されたため、購入商品を変更しました。
さらに手が空き、重くても買物を続けられるカートを使うことで買上点数が増えるという“真水の効果”があります。これだけで2割程度は、客単価を押し上げる可能性を持っていると考えます。
なお、同店舗のスマートレジカートは、第2世代となっていました。OSがWindows10からAndroidに変更されていましたが、ユーザーとしての使い勝手は変わりませんでした。同社 西川取締役副会長 グループCIOにお聞きしたところ、充電などのメンテナンス性を重視しての変更ということでした。ハードのコストを抑えることも狙いとしてはありそうです。
スマートレジカート以外の取り組みは、続く中編で「デジタルサイネージ」について、後編で「リテールAIカメラ」について主に紹介します。
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