ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #10

九州発「トライアル」の売り場は、デジタルサイネージのブレイクスルーを予感させる

2階売場への誘導に成功、鍵は「専門店化」


 改装前の新宮店は、背の高い棚にビッシリと商品が詰まった典型的な従来型スーパーセンターだったそうです。

 よほどの目的商品がないと2階まで上がってくれないという課題を解消するために、1階は日常使いの利便性から頻繁に来店してもらい、2階は楽しさをアピールして時間のある時に立ち寄ってもらうという売り場に変わっています。

 現在、アウトドアコーナーは提案型ホームセンターのような売場に、カー用品・おもちゃなどのコーナーはまるでドン・キホーテのような陳列とPOP展開になっています。



 西川CIOに「なぜコーナーの見せ方が専門店風なのか」とお伺いしたところ、「量販店、ホームセンター、百貨店などの出身者を採用し、売り場づくりを任せているからだ」という返答でした。

 専門店化は、他のメガセンターにも水平展開を検討中で、今後は他店もこういった売り場になっていくのかもしれません。この改装は、お客さまからの評価も上々で、スーパーマーケットの情報サイトでは、次のようなコメントを見つけました。

 「改装して見違えるほど素敵なお店になり、子供達が毎日行きたいと言っています。 2階がすごく楽しいらしく、中でもスポーツコーナーにあるランニングマシーンやダイエット機器から離れようとしません。 おもちゃコーナーも充実しており、種類はかなり増えてました。 衣類コーナーの動線もよくなり見やすくなっていました。 価格はいつも通りリーズナブルを維持したままで嬉しい限り。 大成功の改装オープンでお客さんが倍増しています」

 出典:【ホームメイト・リサーチ - マーケットピア】ショッピング施設情報サイト

 また、トライアル新宮店は、売り場によって床の素材やデザインが異なります。生活用品・医薬品などの売場は清潔感があり、メンテナンス性にも優れた白いセラミックタイル、食品コーナーはそれと同時に温かさも感じる木目調となっています。一方で2階の床は、打ちっぱなしです。これは「安さ」が特徴のトライアルにおける「なぜ安いのか」という質問に答える「納得感の演出」としてあえてそうしているそうです。

 GMSで悩みの種となっている衣料品については、トライアルもやはり現状は4足299円の紳士用靴下を「お父さんのはこれで良いよね」といった動機の購入が中心ということ。

 そこから購入の幅を広げたいという狙いで、定番売場の他に店内にポップアップストアをつくり、百貨店出身者がコーディネート提案に挑戦していました。
 
「A」は若い年代狙いで、「B」は普段から購入している年配層向けのコーナー。

 ポップアップストアが成功するかは、少し時間をおいて判断する必要がありそうですが、デジタル化に限らず挑戦を繰り返すことがトライアルの強みであることがよくわかりました。

 次回・後編は、「新宮店」「大野城店」の顧客の立場での体験レポートと、新開発のAndroidカメラ端末活用について紹介します。
他の連載記事:
ニュースと体験から読み解くリテール未来像 の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録