ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #11

九州発・トライアルを支える最新技術から、小売業の「半歩先の未来」が見えた

工夫された「店内レイアウト」から学ぶこと


 私がQuick 大野城店で「なるほど」と思ったことがもう一つあります。それは、入り口の横にあるレジカートです。



 省力型24時間店舗ということもあり、入口と出口が分かれた「一方通行型」なのですが、出口に風除室はありません。この手の店舗では、風除室を大きめにつくって、買物が終わった顧客がレジカートをそこに戻し、新しい入店客もそれを使うという動線が理想的です。この動きを考慮しないと、出口から入口にカートを戻すという店舗スタッフの作業が発生するためです。

 Quick 大野城店では、使い終えたカートを置く場所の反対側を入口横にして、入店客がそこから取れるようにしていました。カートを止めるストッパーは低くしています。細かいポイントですが、こうした工夫でスタッフの作業量が減ります。スペースを有効活用できるのは、写真を見ての通りです。

 さて、Quick 大野城店は、セルフレジ主体にレジカート用のレーンもあるという設計ですが、新宮店とアイランドシティ店それぞれでレジ構成は大きく違いました。

 新宮店は、平日13時頃にカウントしたところ、有人レジ(セミセルフ)9台に対して「レジ待ち+処理中」が25人程度という状況でした。セルフレジは10台あり、5、6人が常時使っているという稼働率でした。スマートレジカートは3レーンあり、2-3人が利用するというところです。買上げ個数のチェックだけなので、セルフレジよりも処理時間は短いため、利用者数はセルフレジと遜色ないかもしれません。

 一方でアイランドシティ店では、有人レジ(セミセルフ)は3台、セルフレジ10台、スマートレジカート2レーンであり、セルフ、有人、レジカートが比較的均等に使われていました。

 開店して1年以上経つアイランドシティ店の状況を見ると、浸透に一定の時間は必要と感じました。また、スマートフォンアプリでレジカートと同様のスキャンと決済ができる仕組みがリリースされていますが、こちらの利用者は3店舗視察している間には見かけませんでした。

 トライアルのスマートストア3店舗を視察して、一番感じたことは「ちょうど良いテクノロジー活用」の大切さです。現在の最高峰ではなく、そこそこ価格のこなれたテクノロジーを組み合わせることで、便利な顧客体験と完成度の高い売り場を実現していました。それによって、中編で紹介した新宮店の2階のような売場づくり、今回のQuick 大野城店の「出来たて弁当」に人手をかけて価値を提供しているわけです。

 トライアルの取り組みは、小売業はもちろんですが、それらをサポートするITベンダーにとっても参考になる企業です。
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