関西発・地方創生とマーケティング #14
人気の「八代目儀兵衛」社長が語る、老舗の生き残り戦略。米屋が料亭、ギフト通販も展開
2019/08/05
通販、飲食、米卸まで展開する老舗企業
皆さんは、美味しいお米を食べていますか?
日本人のお米の消費量は年々減り、この50年で半分になっているそうです。なぜ日本人は、お米を食べなくなっているのでしょうか。
洋食化が進んだから?それとも、糖質を気にして?
実は、美味しいご飯を食べていないから、なのかもしれません。
皆さんは、京都で1787年に創業した老舗米屋 八代目儀兵衛をご存知でしょうか。お米を軸に飲食店、通販ギフト、農業支援、米卸といった事業を展開して、いま注目を集めている企業です。
米料亭の「八代目儀兵衛 京都祇園本店」は、毎日行列ができるほどの人気店。最近では、日立とコラボレーションして、お米が美味しく炊ける炊飯器の開発にも協力しています。
そこで今回は、八代目儀兵衛として会社を創業し、売上を伸ばしている代表取締役社長の橋本隆志さんにマーケティングと地方創生をテーマにお話を伺いました。2006年に橋本さんが社長に就任した時に1億5000万円だった売上が、現在は10倍の15億円になっています。
ブランディングが成功した秘訣
初代儀兵衛は、寛政の改革が行われた1787年に米問屋として創業します。1925年に四代目がお米屋を創業し、現在の八代目の橋本さんが2006年に「八代目儀兵衛」を設立して、お米のネット通販を開始。そして2009年に米料亭「八代目儀兵衛 京都祇園本店」をつくり、飲食業に参入。現在は、銀座、成田空港にもお店を出しています。
そんな順調に成長している八代目儀兵衛のマーケティングについて、橋本社長に尋ねると、「マーケットに合わせにいくのではなく、自分たちでオリジナル性を持つことで、消費者に相手にしてもらえるという考え方。マーケティングは嫌い。大事なのは、ブランディング」と言います。
マーケットを分析して勝てるポイントを見つけて打って出るのではなく、自分たちが大事だと考える強みを持ち、それを押し出して他社と差別化して、共感する顧客をつくるという戦略でしょう。
橋本社長は、ブランディングが成功するための秘訣は「オリジナル性」にあると言い切ります。「米問屋は、取扱う量を増やすほどビジネスは強くなるが、米屋として生き残るためには量ではなく質。そして八代目儀兵衛にとって、それはお米のオリジナルブレンドにある」と言うのです。
日本は、お米が不作だった年、タイ米を輸入して日本産とブレンドしたことがあります。そのときのイメージから、日本人はお米のブレンドを偽物のように思っています。
しかし、橋本社長は決して、そんなことはないと話します。ワイナリーでワイン製造のために複数の種類の葡萄を混ぜるように、お米もブレンドすることによってブランド米となると考えており、価値を上げられる、と。まるで、ブレンドで有名なボルドーのワインのようですね。
ただ、八代目儀兵衛というブランドを打ち出して、それまでとは違った商売を始めると、周囲からは「上手くいくはずがない」と非難され、さらには足を引っ張ろうとする人まで現れたそうです。
そんな中で、橋本社長自身も勝算があったわけではなく、「多くの街の米屋が廃業していく中で、生き残るための背水の陣だった」と語ります。