関西発・地方創生とマーケティング #14

人気の「八代目儀兵衛」社長が語る、老舗の生き残り戦略。米屋が料亭、ギフト通販も展開

プロデュースバイ京都でいいじゃないか


 企業として地方創生にどう向き合っているのか、聞きました。

 橋本社長は、京都で生まれ育った京都人です。ただ、東京など首都圏以外は、京都も含めて地方だと言います。

 「京都のビジネスパーソンは、東京をスルーして海外を意識するけど、それではいけない。きっちりと日本語で多くの日本人に伝えることが大事だ」、と。

 実際、八代目儀兵衛の売上の70%は首都圏だそうです。これは、インターネット通販の売上が大きいためでしょう。そうした背景もあって、「情報感度が高く、市場としても大きい東京から情報発信しないとダメだ」とまで語ります。

 さらに、「京都産のものを扱えばいいという考え方は、好きではない。全てが地元産である必要はなく、本物を出し続けるというのが京都人の考え方。大切なのは、良いものを扱うという目利き。その考え方が京都らしく、ものづくり文化を大事にすること」だと言います。
 
お米番付の審査

 八代目儀兵衛では、1年に8種類、自分たちがおいしいと思う、今年食べるべきお米を選ぶ「お米番付」を発表しています。最終選考の審査員には、ミシュランの星付き料理人やフードコラムニストなどが名を連ねます。

 「有名産地のお米は、何もしなくても売れる。逆に名前の知られていない地方のお米は、いくら美味しくてもなかなか売れない。何々産が一番と言うけれど、それには違和感がある。他にも良いものはあるはず。だからお米番付も1番を決めるのではなく、ベスト8を選出している」と橋本社長は語ります。

 入選した農家には、地元メディアの取材が来るなど注目が集まります。例えば、広島の農家は「お米番付」に選ばれたことがきっかけでイトーヨーカ堂との取引が始まったそうです。

 地方の一農家に光が当たることが、その地方のブランド力を上げ、活性化の一助になるのだと思います。京都の企業でありながら、京都という地方を活性化させるだけでなく、京都以外の地方の活性化に貢献されています。

 軸はあくまでお米であり、京都ではない。儀兵衛のミッションは、地域を発掘し、実際に取引することによって、地方を盛り上げること。自分たちのビジネスにダイレクトにつながらない単なる社会貢献ではなく、社会的ミッションを乗せて自分たちの事業につなげる。地方創生ありきではなく、ビジネスとして地方創生に貢献しています。

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