小売の未来は「ニューリテール」にある #01

伝統的なリアル店舗、革新的なEコマース。その対決の勝者は、どちら?

O2O、オムニチャネルより進化したOMO(Online Merges with Offline)


 従来オフライン店舗とEコマースの統合を、「O2O」や「オムニチャネル」という言葉で言い表していた。これらは独立して発展してきたリアル店舗のチャネルと、インターネットによるEコマースをつなげる初期段階の考え方に基づいている。

 それはそれぞれのチャネルを利用する消費者が異なるため、それらをお互いにつなげることを意図していた。具体的には、リアル店舗にQRコードを設置してそれをカメラでスキャンすれば商品情報をインターネット上で確認でき、在庫を確認してEコマースで購入したり、ソーシャルメディアやWEBサイト上で見ている商品が近くのリアル店舗で購入できることを促したり、と「情報の流れ」をつなげることで、チャネル間の相互送客を目指していたからである。その意味ではEコマースもリアル店舗と変わらないチャネルのひとつであり、それらを「全体的」に見て管理することがその目的だった。「オムニ=Omni」とはラテン語で「すべて」という意味である。

 しかし、アリババが実際に実行し始めた「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」などの新しい小売形態を見る限り、単純に相互送客や全体的管理とは違った世界が思い浮かぶ。それらは単純な「売る場所」のみの展開ではないからだ。

 AI研究者であり、かつてGoogle Chinaを率いていた李開復(リー・カイフー)は、2017年に著書『AI Superpowers』のなかで、中国で急速に発展しているテクノロジーをもとにしたサービスについて、OMOという言葉を提唱している。それはOnline Merges with Offline、つまりオンラインの世界がオフラインとMerge(融合)しているという現象である。ニューリテールを理解する際に、李開復の言うOMOを前提として捉える必要がある。

 それは劉潤の『新・小売革命』によれば、小売における3つの「流れ」において、オンラインとオフラインの利点を最大化することがニューリテールの本質であるからだ。そしてオンラインとオフラインのそれぞれの特長を融合させることで、どちらか一方のチャネルに偏ることなく、統合したシームレスなサービスを全体としてデザインすることが求められる。それは並べれば、それぞれ下記の3つの組み合わせになる。
 
1.情報流 → オンライン:高効率性 オフライン:体験性
2.物流 → オンライン:広範性 オフライン:即時性
3.金流 → オンライン:利便性 オフライン:信用性
 
劉潤 書籍『新・小売革命(2019年刊)』より

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