小売の未来は「ニューリテール」にある #01
伝統的なリアル店舗、革新的なEコマース。その対決の勝者は、どちら?
「情報流」におけるオフラインの体験性とオンラインの高効率性の融合
「リアル店舗はメディアになる」と、米のリテールビジネスコンサルタントのダグ・スティーブンスも自著『小売再生』で語っている通り、リアル店舗において実際の商品(物)を触ったり、試しに着たり、使ったりできる「体験性」をECのようなオンラインで提供することは難しい。
このことを以前は「ショールーミング」として、商品を実店舗で確認してネットでより安くなっているものを探すといった行動をネガティブに捉えられた。それがいまや両方の利点を融合するのであれば何も問題はない。特にその利点を享受するのが「ブランド」である場合は。
オンラインからスタートしたブランドは、もともと製品の展開や販売に関して、直接顧客とつながることで商品の在庫量をはじめ、価格を最適化させて高い効率を維持している。それにオフラインの良さである体験性を融合すれば、新しい顧客の獲得効率を上げることができる。
このメディアとしての体験型店舗は、対消費者向けブランドにとって一般的になりつつある。米Appleのアップルストア、米Nikeのハウス・オブ・イノベーションのような人気ブランドの小売業態をはじめ、米の眼鏡店Warby Parker(ワービー・パーカー)や米マットレス店Casper(キャスパー)のようなネットからスタートしたD2C(Direct to Consumer消費者に直接売るブランド)あるいは、DNVB(Digital Native Vertical Brand デジタル由来の垂直型ブランド)と呼ばれる新興ブランドにとっても、「商品を販売しない」体験型店舗はなかば常識となっている。それは劉潤が解説している通り、「ブランドにとってはどこで買ってもらっても利益がブランド側に入る」からである。
これらの体験型ブランド店舗は、日本でもユニクロ傘下のアパレル店舗GU(ジーユー)が原宿のGU STYLE STUDIO という実験店舗でスタートしているが、まだ一般的とは言い難い。またAppleを除けばまだ成功しているレベルには達していないだろう。では中国のニューリテールの真骨頂はどこにあるか。
次回はアリババグループの「天猫小店」を例にとって具体的にその仕組みを解説しよう。
- 他の連載記事:
- 小売の未来は「ニューリテール」にある の記事一覧