小売の未来は「ニューリテール」にある #02

中国アリババがeコマースの台頭で、存在感が薄れていく街の小さな店舗と連携する理由

どのように高効率のビジネスに変貌させたのか


 アリババは、まず各店舗に対して商品サプライのプラットチェーンフォームであるリンシャオトンをつくり、物流体制を整えた。そして商品マーチャンダイジングに関して、アリババのECであるタオバオやTモールでの購買データに基づいて最適化させた。

 劉潤によれば、このようなアリババからサポートされた天猫小店のサプライチェーンにおける商品供給の幅は「セブンイレブンの数倍」で、しかもより精度の高いマーチャンダイジングを背後にあるビッグデータをもとに提供できるという。

 また、セブンイレブンは、店舗周辺に住む人たちが過去数年間にどのような商品を購入したのかを知らないが、アリババはそれを把握した上でビッグデータから正確にマッチングできるというのだ。

 これがオンライン企業であるアリババがオフラインの天猫小店に提供できるデータエンパワーメント、つまり情報によってオフライン店舗を効率化させるということである。

 天猫小店は、オンラインから得られる周辺住民の購買のデータから情報流における「高効率性」を引き出し、身近な小売部というオフラインにおける商品がすぐに手に入る「物の即時性」を提供する窓口であり、それは物流や需要プランニングに優れたデジタルプラットフォームのデータの「広範性」に支えられている。それらが、すべてつながっているからこそニューリテールなのである。

 いまや伝統的な夫婦経営の小売店舗は、アリババの手によってセブンイレブンを超える高効率のニューリテールのコンビニエンスストアに進化したのだ。


 

モバイル決済競争は、「データエンパワーメントが理由」


 劉潤の『新小売革命』によると、アリババグループの副総裁であるリンシャオトン事業部総経理の林小海は、この天猫小店について「各店舗は月に1000人の客が来店する。600万店舗ならその来店総数は6億人に相当する。しかもこの6億人は老人や子どもでe コマースを利用できない消費者群である」と語っている。

 この大規模な流入トラフィックは、たしかに劉潤の言う通り、オンライン企業にとっては「人流収集器」であり、それがあることでますます効率的に新規顧客の獲得ができる。しかも林小海の発言の通り、それは明らかにこれまでeコマースでは買わなかった新しい人たちなのだ。

 最近、日本の流通やIT企業がこぞってモバイル決済をローンチして競争が激化しているが、これらの意図はニューリテール先進国の中国からするとオンライン企業とオフライン企業のそれぞれの視点で解説できる。

 つまりソフトバンクグループ、楽天グループ、LINEグループにとってはアリババと同様オフライン接点の拡張によって「人流」と「情報流」だけでなく「金流」の信用性と利便性を確保するためである。

 そして、セブン&アイ、ファミリーマートにとっては「情報流」のデータエンパワーメントを狙っている。現金の信頼度が高い日本のような国は、オンライン決済の「信用度」を上げることでデータ活用の利便性を拡大することが求められているからである。

 日本はそもそも現金決済によって既存オフライン流通の顧客幅が広く、それが楽天のようなオンラインのeコマースが拡大したい顧客でもあり、同時にオフライン流通にとってはeコマース企業が持つ豊富な顧客データとそれによる効率化が欲しいのである。そのためにまず決済方法を浸透させたいのだ。

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