ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #13

中国スーパー「盒馬鮮生」が、顧客から圧倒的に支持される理由がわかる1枚の写真

フーマーの本質は、ロボットレストランではない


 筆者はフーマーの3業態4店舗について視察と買物体験をしました。「視察」というと必ずと言っていいほど行くロボットレストラン(南翔店)にも行きました。



 自分で“いけす”から魚貝を網ですくい、調理方法を指定すると、ロボットがテーブルまで運んでくる体験はレジャーとして非常に面白いものでした。

 ただし、あくまでも100店に1店の旗艦店でのデモです。現地でフーマーのファンになっている日本人にインタビューしたところ「ロボットレストランは行ったことがない」とのことでした。やはり、フーマーが支持されている本質はそこではありません。  

 フーマーのすごさは、次の2枚の写真に現れています。





 これだけで「すごい!」と感じた方は、素晴らしい観察力を持っています。

 1枚目の写真は「盒馬鮮生king88店」の精肉コーナーで水曜日に撮ったもので、2枚目の写真は「盒馬菜市業態1号店」の野菜平積みコーナーで木曜日に撮ったものです。

 フーマーの「日日鮮」というプライベートブランド(PB)は、曜日ごとに包装が異なります。水曜日は「黄色で3」,木曜日は「オレンジで4」という具合です。水曜日は「黄色の3」の肉しか並んでいないし、それらは木曜日に並んでいないということです。つまり、水曜日には水曜日に店舗に仕入れた商品しか並べないのです。

 「なんだそれだけか…」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、これを実現するための小売業の手間はすさまじいものがあります。単に「翌日売れないならロスが増えるよね」というものではありません。

 初回納品の時間が各曜日の開店前に限定されるため、店舗網と物流と生産者供給量の最適化が高レベルにできていないと実現できません。野菜などは農家からの直接仕入れを毎日行っているということですが、これを150店舗超で実現するだけでも大変な難易度です。

 フーマーは基本的に倉庫在庫がなく店頭の棚だけで在庫を管理しています。倉庫に在庫がないということは需要を正確に把握して、迅速な補充発注を行う必要があります。世界最大のB to Bプラットフォームを持つアリババだからこそ実現できているという見方もできます。

 また、発注量を見誤ると大量のロスや機会損失が発生します。これこそデータをフル活用しないと実現できない商売です。まさに、ニューリテールです。

 モバイルオーダーでの店舗在庫の自宅配送というネットスーパーの延長線だけがニューリテールではありません。オンラインからオフラインまであらゆるデータを活用することで新店舗の出店精度を高めることもそうですし、何よりもフーマーのPBは、ニューリテールだからこそ実現できています。

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