現場起点のEC・物流最前線 #01

目指せ、ピタゴラスイッチ。EC・物流がいま熱い理由【市橋邦弘】

ZOZO買収、アマゾン「置き配」…EC界隈が熱い!


 こんにちは。今回から連載を担当させていただきます市橋と申します。かれこれ20年以上EC関連の仕事をしておりまして、最近ではIoTやRPAを活用した次世代のEC物流を考えるプロジェクトも始めたり、とても熱くて楽しい毎日を過ごしています。

 この連載を通じて、ECがやりたくなったり、ECや通販ビジネスが大好きな仲間が増えたりしたら嬉しく思います。そんな人が一人でも増えればこの記事に価値はあったし、EC業界の未来がもっと面白くなることに繋がると信じているからです。

 早速ですが、最近EC界隈が熱いですよね! ヤフーがファッションECサイトを運営するZOZOを買収する方針を発表し、楽天は「ワンデリバリー」構想を掲げてECのご注文が一律3980円以上で送料無料にする物流戦略を出店企業に発表。アマゾンは物流クライシスの原因のひとつである再配達問題を解消すべく「置き配」の標準化に向けた実証実験を発表…と、まさに激動と言っていい状態です。

 そんな時代の変化とともにメーカーがマスで直販を開始したり、小売事業者以外、最近だと自治体が課題解決の手法としてクラウドファンディングでECを採用したり、はたまた最近話題のD2Cプレイヤーが急成長して物流や生産管理に困って相談をいただくようなケースも増えてきました。どれもいろんな意味で熱いですね。時々、熱すぎて炎上することもあります。

 さて1回目の今回は、ECのざっくりとした概況をお伝えし、これからECを始めようかなと思っている方や、興味を持っている方にECや通販物流の楽しさが少しでも伝わるといいなと思います。そして皆さまのEC関連業務に少しでもお役に立てたら嬉しく思います。
 

私がECをピタゴラスイッチに例える理由


 私が所属しているフェリシモはSPA(製造小売)型の通販で、バリューチェーン風に図示すると次のようになります。流通系で商品を仕入れる場合も、BtoCのECであれば、だいたいこのような形になると思います。
 
BtoCのEC 簡易バリューチェーン

 利益を創出するためには、売れる商品の開発も大事ですが、欲しいお客さまに欲しいタイミングで、欲しい数をご自宅や店舗にお届けすることが必須条件になります。どれだけ受注をいただいても商品を出荷できないと売上は計上されません。

 また、それにかかる物流コストが高ぶれすると、販管費が増大して利益を圧迫します。当たり前のことですが、これがなかなか難しく、商品開発、生産管理、販売、物流などでチームワークを発揮して一連のマーケティング活動全体を最適化することが求められます。

 これから新たにEC・通販を始める人には非常にハードルの高い話のように聞こえてしまうかもしれませんが安心してください、良い方法があるのです。自社の強みをよく考えてそのコア業務に集中し、ノンコア業務は自社では行わないという「選択と集中」を行うことです。それによりECを速く立ち上げることが可能になるメリットも生まれます。

 例えば、メーカーが直販のECを始めたいと思った場合に直販用の商品開発がコア業務だったとします。その場合、ノンコア業務は外部のパートナーやASPなどのサービスを活用することも可能です(もちろん売上と原価、販管費など、PLをどう設計するかも大事になりますが、その話は本題とはそれるので別の機会に)。

 すべてを自前でやれたらそれはそれで素晴らしいのですが、注文が予測を大きく超えたりすると、生産が追いつかなかったり、広告費が無駄撃ちに終わったり、配送が遅くなってお客さまが離反なんて不幸がおきたりしますので、特に人的リソースが限られる最初の立ち上げ時はご注意ください。

 つまり、ECビジネスは、利益の創出に向けて商品の開発から配送、その後の返品対応まで外注先も含めてコントロールして、それぞれのパートがきっちりと仕事をすることで全体としてスムーズに回るようになります。うまく回った時の、壮大なスケールで行われる「ピタゴラスイッチのような感じ」がECの醍醐味でもあり楽しさでもあります。

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