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デジタル化時代の次世代コミュニケーション、デジタル×アナログの最適解の追求 #01

「デジタル偏重による3つの弊害と、その解決策とは」日本郵便 鈴木睦夫氏

 日本郵便の社員がマーケティングを語ることに、違和感を覚える人も多いと思います。そこで少し筆者の経歴に触れておきます。1988年にP&Gに入社して以来、一貫してマーケティングや事業開発に携わり、直近はIMJというデジタルエージェンシーからコカ・コーラを経て、2015年から日本郵便でDM市場全体の拡大振興に従事しています。

 30年以上にわたるマーケティング経験とデジタルとアナログの両面を見てきた知見をもとに、昨今のマーケティングについて考察してみたいと思います。

「デジタリアン」の登場

 いまは、まさにデジタルの時代。マーケティングだけでなく経営そのものもデータドリブンになっています。特に、ここ10年は2つの革新によって環境が大きく変わりました。

 ひとつはスマートフォンの登場です。いつでもどこでもだれでも情報の収集発信が容易になると同時に、企業側でもユーザーの行動履歴データを収集できるようになりました。これによって、ユーザーの接触する情報量が爆発的に増加・分散して、従来の手法ではユーザーにリーチすることも記憶にとどめることも難しくなりました。

 もうひとつはクラウド技術の登場です。これによって指数関数的に増加するビッグデータを従前と比較して圧倒的に安価に迅速に精緻に分析し、活用できるようになりました。

 この2つの革新からデジタル分野でのサービスやソリューションが数多く生まれ、分散するユーザーを補足したいマーケターは、こぞってデジタルマーケティングという領域で括られるメディアやツール、サービスの導入に邁進してきました。圧倒的に早く安価に情報を届けられ、なおかつ効果測定が容易にできるデジタル領域の技術は、マーケティング手法を大きく変えたと言われています。その結果、印刷メディアの終焉と言われたこともありました。

 デジタルマーケティングという言葉がもてはやされる中で、マーケッターの課題も同時に浮き彫りになりました。新卒で入社して以来10数年間、現在マーケティングの最前線にいる人は、デジタル技術の進歩と共に社会経験を積んできたわけです。日々、新しく出てくるデジタルメディアやソリューションにキャッチアップするだけで大変で、デジタルマーケティングの中だけに閉じてしまう傾向があります。以降こうしたデジタルマーケティングだけに邁進する方々を「デジタリアン」と呼ぶことにします。
 

デジタル偏重による課題

 そんな中、ユーザーの行動履歴を含むビッグデータを解析できるデータマーケティングプラットフォーム(DMP)には、デジタル情報だけでなくイベント来場や電話問い合わせなどのアナログ情報も取り入れるようになり、あらゆるデータを統合して自動的に広告出稿やメール配信を実行できるマーケティングオートメーション(MA)というツールが隆盛を誇るようになりました。入口のデータはデジタルアナログ双方の統合ができている一方で、出口のコミュニケーションがデジタルだけに閉じていることを、疑問視する声が聞かれるようにもなってきたのです。

 デジタルメディアには、圧倒的に安価な一人あたりのコスト、瞬時に配信できる圧倒的なスピード、瞬時に計測可能という特徴がある一方で、デジタリアンもいくつかの壁が存在することに気付き始めています。
 

1.メールパーミッションの壁

 平均すると3~4割というeメール配信可能な人だけにしかコミュニケーションできないうえ、その開封率やクリック率は下降傾向にあり、メール配信できない人の中に優良顧客が多く存在するにもかかわらず、コミュニケーション手段がないこと。
 

2.デジタル広告ブロッカーの壁

 2年ほど前から米国で開発されデジタル配信される広告をスマートフォンなどで非表示にするアプリが、日本でも流行りはじめている。いくら精緻にターゲティングして大量に配信してもユーザー側で非表示にしてしまっては、情報を届けるすべがなくなること。
 

3.効率主義の壁

 計測が容易であるがゆえに、ROIだけに焦点を当てた施策設計になりがち。その結果、効率だけを指標に施策の取捨選択をして縮小均衡状態に陥るケースが散見される。効率視点のKPI追求だけではビジネスがスケールアウトしなくなること。

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