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デジタル化時代の次世代コミュニケーション、デジタル×アナログの最適解の追求 #01

「デジタル偏重による3つの弊害と、その解決策とは」日本郵便 鈴木睦夫氏

アナログと組み合わせることが課題解決のカギ

 デジタリアンの漠然とした不安は当然です。なぜなら、ユーザーはあくまで人間というアナログな存在であって、その行動はデジタル世界だけに閉じていないからです。ユーザーがデジタルとアナログを縦横無尽に行き来している中で、コミュニケーションがデジタルだけでは片手落ちです。

 もちろん、デジタルとアナログを上手に組み合わせている企業もたくさん存在します。上場企業400社弱のマーケターへの日経BPコンサルティングの調査も、デジタルとアナログを組み合わせることが施策成功のカギだということを証明しています。


 
 ただ、上記の組み合わせを実施している企業の割合は、全体の29.1%でした。つまり残り7割以上は組み合わせ施策を実施していないという言い方もできます。ここにマーケティング業界の課題と共に伸びしろが存在しているという見方もできます。

 上記の調査は、年を追ってどう変化しているでしょうか。3年間の定点調査をしてみると、多くの企業がデジタルxアナログの組み合わせに取り組み始めていることがわかります。2016年から2017年の1年間は、実施意向層が10.1%と急激な伸びを見せたものの、実施層は2.4%の増加にとどまりました。

 ところが2017年から2018年の直近1年間では、実施意向層が4.1%減少して実施層が4.0%増加したのです。今後、組み合わせを実施したいという実施意向層が、実際に組み合わせ施策を実施し始めたことを示しています。



 マーケティングファネルのどの段階でも、組み合わせ施策が有効であると回答している企業が多いことから、やはり「組み合わせること」が重要なことが理解できます。


 

課題は、知見・組織・人の分断にある

 すでにアナログとデジタルを組み合わせる技術的環境は整っています。ただ、俯瞰視点でマーケティングシナリオを描くことには大きな課題が存在します。

 デジタル分野はデジタル企業に、アナログ分野はアナログ企業に、それぞれ知見が集積しています。ただそれを繋いで知見を共有する環境も人材も非常に少ないのが現状です。まさに知見と人間が分断されている状態です。さらには、デジタルマーケティング部のように組織ごとデジタルに閉じることを強制されている場合も少なくありません。組織の分断です。

 広告主が、デジタルとアナログにこだわらず統合的なマーケティングがしたいと思っても、その具体的なマーケティングシナリオを提案できる人間も企業も少ないのです。

 次回以降の連載では、さまざまな企業が実際に取り組む「デジタルxアナログ」組み合わせ実験の事例や海外の事例を交えながら、組み合わせ最適解を探るたびに出たいと思います。
 
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