関西発・地方創生とマーケティング #15

靴下専門店「タビオ」越智社長が語る、メンズにこだわる理由

プロダクトアウトとマーケットインのバランスが大事


 越智社長は、「お客さまが履きこなしに求めるものに対応することが大切で、マーケティングとは、プロダクトアウトとマーケットインのバランスを取ることだ」と言います。

 この実行は至難の技ですが、どちらに振れているのかの傾向はすぐにわかるそう。「即ちマーケットインに寄ったときは売上が過剰に良くなり、プロダクトアウトに寄った時は悪くなる」と。

 だから業績が良くなり過ぎると、しっかりと「無地もの」を売るように力を入れる。一方で、悪過ぎる時は市場のニーズに合っていないので、商品開発を見直すとのこと。

 また、広告は実施しないそうです。テレビCMなどで「良い商品だ!」と伝える必要はなく、「良いものであれば自然と広がる」と言います。ただし、お客さまにお勧めしたい商品ができると、店頭でしっかりお伝えできるようにPOPをつくり込むそうです。

 「良い靴下は、工業製品として正しく、センスのあるもの」と語ります。ただし、「こうした商品は、得てしてプロダクトアウトに陥りやすい」と注意を促します。例えば、去年売れた商品に似たデザインをつくった場合、お客さまは店舗の前を通っても新商品だと気づかない。その結果、売れなくなるそう。そこには、「マーケットを見なかった、自分たちへの過信がある」と語ります。

 人は保守的で現状を変えたくないし、そのためにデータも恣意的に見る傾向があります。例えば、黒が売れているのはネイビー、ボルドーという見せ色がある上、黒の商品を置く棚の面積が大きいからなのに、売れている数字だけを見て、もっと黒をメインに生産すべきだ、と主張するといった事態が起きるようです。

 コンビニエンスストアも効率だけを考えると、売上の大きいお弁当をたくさん置くべきですが、実際はあまり売れない雑誌や文房具も棚に並べています。ここに行けば何でもあるという「万屋感」を出すためです。やはりバランスが大事なのでしょう。

 「流行を読んで一挙に大量に生産することはせず、どんな商品をどれだけ生産するのか、ニーズをみてテスト販売する。国内生産なので、今やると決めれば明後日には近くの店に出すことができる。そして、どの時間に誰に売れたかを確かめる。売れるものは即売するし、一週間掛けないと売れないものは、売れ筋商品には絶対にならない」と語ります。

 次からは、越智社長が語った印象的な言葉を紹介していきたいと思います。

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