関西発・地方創生とマーケティング #15

靴下専門店「タビオ」越智社長が語る、メンズにこだわる理由

父から論語の大切さを学んだ


 芸大出身ということもあり、社会へ出てから経済学、心理学、リーダーシップ論、マーケティング論を学ばれたそう。一方で、お父さまである会長からは、そうしたテクニックよりも、孔子や孫子の教えを学ばれました。

 先ほどの男性用靴下市場の拡大も「順調に売上を伸ばし、商売繁盛で満足」とは少し話が違うようです。自社の利益を社員とお客さま、株主に還元することはもちろん大事ですが、越智社長の経営思想はそこに留まらないのです。

 何のために、男性用の靴下の販売を増やすのか。靴下の専門工場は、男性用と女性用に分かれているそう。タビオの売上の8割は女性用で、このまま男性用靴下の売上が伸びずに、工場の存続が危ぶまれる結果になります。そうなると、男性用靴下製造という産業が衰退します。それが即ち日本の産業、ひいては国益の衰退に繋がると考えていらっしゃいます。

 越智社長が拘っているのは国益であって、自社だけの繁栄を考えているわけではないのです。「海外生産にすると、生産国が中国からベトナム、タイなどへと次々に代わって技術が継承できない。人件費を抑えて安く生産し、商業としてコスト競争に勝つという方法では、生産という産業が中国をはじめ海外へ流出して、結果的にそれらの国を富ませて日本の国益を損なうことになる」と警鐘を鳴らします。

 一企業の社長でありながら、国のことまで考える。まさにお父さまのお好きな論語の影響を受けていらっしゃるからに他ならないと思いました。
 

経営に必要なのは、商業ではなく産業


 サラリーマン社長は、目の前のことに必死で、その企業の一瞬の繁栄に貢献するけれど、オーナー社長は永続させることを考える。そのため「商業ではなく産業と結びつける」。そして「企業の目的は拡大ではなく、永続であり、タビオの場合は工場を永続させることを考えると、経営で迷うことはない」と仰います。

 さらに家業を継いだことについて伺うと、心の準備はできていたと言います。また社長は権限、権力ではなく、ひとつのポジションに過ぎない。そして必要なのはリーダーシップと決断力、判断力、企画力だそうです。

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