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富士フイルムとの実証実験で証明された、ダイレクトメールの有用性 【早稲田大学 恩藏直人教授】

優良顧客へのEメール送付は、逆効果になる




 次の実験では、顧客を過去の取引量の多さで4つの水準に分けて、それぞれにクーポンを送り、効果の違いを検証しました。経済学では「限界効用の逓減」という法則があります。これは、ジョッキ一杯のビールをおかわりして飲むなど、人間が同じ行為を繰り返す中で、追加で得られた満足度(効用)は少しずつ減っていくことを意味しています。

 ところが逆に、ビジネスの世界では、限界効用が逓増すると言われています。つまり、何らかのアクションを起こしたとき、過去に多くの取引がある顧客の方がより高い効果が得られるということです。そこで、この法則がクーポン配信にも当てはまるかどうかを実験しました。

 その結果、過去の取引量が多い顧客に対してEメールを送ると、むしろ逆効果だというネガティブな反応が得られました。これは顧客の心理として、自分はブランドの売上に貢献しているという意識があるため、コストをかけずに簡単に送れるEメールのコミュニケーションでは、軽んじられていると感じるからだと考えられます。

 限界効用逓増の法則に基づいて、仮説的に考えたDMのプラス効果は得られませんでしたが、過去の取引量の多さによって、EメールのようにDMがマイナスに働くことはありませんでした。

 実験を通して、Eメールには広く伝えるという効果はありますが、「ロイヤリティの高いお客さまを大切にしたい」という思いは伝わらないことが分かりました。大切なお客さまに思いを伝えるには、デジタルではなくアナログの紙が有効です。デジタル一辺倒のこの時代において、伝統的なアナログの価値が見いだせたと考えています。

 この成果は国内の学会で発表しました。今後は、海外の学会でも報告したいと考えています。また、早稲田大学の学内においてシンポジウムを開催しましたが、多くの方にご来場いただき、関心を持っていただけたと感じています。
 

JR九州で、会員データを活用した新たな実験を開始


 これらに続くDMの実験として、JR九州さんとの産学連携をスタートしました。JR九州さんは、新幹線などのチケット購入の窓口として、駅構内にある「みどりの窓口」のほかにインターネット上でも販売しています。また、JRキューポというポイントプログラムを運営しており、鉄道や駅ビルなどグループ各社の顧客基盤を共有化しグループCRMを推進したいと考えています。

 現在は、どの企業も人手不足。JR九州さんはチケットの購入はできる限りインターネットにシフトさせて、売上を伸ばしたいと考えていました。そこで、インターネットでのチケット購入を増加させるために、効果的なクーポンの配布方法を検証しています。

 実験の対象は、JR九州のクレジットカード「JQ CARD」会員。JQ CARDは駅ビルでのお買い物には多く利用されますが、インターネット列車予約の利用、つまり鉄道利用ではまだ活用が進んでいないという課題があります。またインターネット列車予約の会員に対するコミュニケーションはメールマガジンが主となりますが、メールが届かない会員も一定数いるというのも問題でした。

 そこで不定期に発送しているDMを母体にして、いろいろな方法を組み合わせてクーポンを送ることにより、効果的な方法を発見できるものと考えています。
 
 今後も、日本郵便さんと共に、富士フイルムさんやJR九州さんなど事業会社とチームを組み、業種業態を超えて実証実験を行っていく予定です。我々からすると、企業が本当に抱えているマーケティング課題は、産学連携をしなければ見えてきません。そして、企業側も大学と組むからこそ、客観的な結果を得ることができます。企業の皆さんには、もっとアカデミックとの連携に目を向けていただきたいと思っています。

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