ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #16

LINEとヤフーの経営統合が小売業に与える「6つの影響」

前回の記事:
OMO時代、サントリー・Oisix・ビームスの「成果=営業利益」に繋がる顧客体験

仮説立案のための考察と、未来予測


 本記事のタイトルは、あえてLINEを先に持ってきています。また、デジタルと相性の良い「リテール」ではなく「小売業」という単語を選びました。

 前者は、両者の力関係ではなく、今後消費者に向けて前面に打ち出すブランドは、LINEであると予測したからです。後者については、日本で圧倒的な影響力を持つのは間違いない、という考えから日本語にしました。

 というわけで、「小売業×ICT」をお手伝いする端くれとして、LINEとヤフーの経営統合への考察と、未来予測を書き連ねていきます。

 とはいえ、「予測」は当たらないものです。需要予測ひとつとっても、「予測」が当たるのであれば、アパレルの在庫一掃バーゲンセールは存在しませんし、あらゆる小売店舗で欠品や過剰在庫が発生することもありません。コンビニエンスストアのオーナーも廃棄ロスがなく、安心して本部供給の端末予測通りに発注することでしょう。

 それでも今回予測するのは、それが「ギャンブルではなく、ビジネスの仮説を考える元になるから」です。それでは、6つの影響を予測していきましょう。
 
経営統合の記者発表会
 

予測① 消費者に押し出すブランドは、LINEが中心となる。


 その最大の理由は、(実際は、世に存在しない)ヤフー本社へのライセンスフィー年300億円弱の節約です。ちょっとしたことですが、収益向上への効果は絶大です。

 どの程度、時間をかけるかはわかりませんが、そういう方向性になると考えます。世界に打って出る際にもヤフーブランドでは支障がありますし、すでにLINEは台湾やタイ、インドネシアなどアジア各国でも使われているので、看板を一本化するなら「LINE一択」でしょう。
 
参考:
米Yahoo!の主要事業はベライゾンに48.3億ドル(4830億円)で買収(2016年7月25日発表)された。保有株の管理会社である米Altaba(旧Yahoo!)は、ヤフー日本法人株の約35%を2018年9月10日に売却している。この時点でヤフー日本法人との縁は切れた。そして2019年1月よりAOLと米Yahoo!統合企業は「Oath」となった。(Oathは、Verizon Media Group傘下)2019年1月、これで米国でのYahooはすべて消滅している。しかしながら、日本のヤフー株式会社は、『Yahoo』という名の使用ライセンス料金を売上高の3%として「Oath(旧Yahoo!)」に上納しなければなない契約だ。2018年度の売上、9,547億円の3%はざっと286億円となる。営業利益1405億円の20.3%、当期利益778億円の36.7%にもなる。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190909-00141874/
 

予測② Tポイントからの離脱。


 圧倒的なユーザー数を持ち、業態をまたがってアクティブに使用されているTポイント。独自ポイントの運営が困難な中小企業および企業規模を問わず新規ユーザーの獲得には、とても有効な手段です。

 ところがYahoo! JAPANの利用者数は約6700万人、LINEのユーザーは約8200万人なので、もはや新規獲得は課題ではありません。また、LINEポイント、PayPayボーナス(ポイント)という独自ポイントが既に存在します。共通ポイントに委託するコストはもちろん、独自ポイントを強く打ち出す流れは必然です。



ヤフーとしては、長く一緒に取り組んだ歴史があり、金額も大きいため、時間はかけるかもしれませんが、世界を視野に入れるなら移行するでしょう。

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