市場創造に挑む~リテール×メーカーによる限界突破~ #01

実店舗に宿る「市場創造力」とは? イオン九州 川村泰平・サントリー 中村直人・グランドデザイン 村尾大介

 リテールとメーカーの連携を促進し、消費者までの一気通貫のマーケティングを目指すカンファレンス「リテールアジェンダ2019」が12月3日、4日に大磯プリンスホテルで開催される。そのカウンシルメンバーの3人が、人口が減少する日本でどうすれば市場創造ができるのか議論した。
 

実店舗の武器である「非計画購買」

読者の皆さま、はじめまして。グランドデザインの村尾と申します。生活者と店舗・商品をつなぐ「Gotcha!mall(ガッチャ!モール)」というプラットフォーム事業を運営しています。

人口減少が避けられない日本において、企業が生き残るには「市場創造」が不可欠です。「リテーラー×メーカー×パートナー」でその命題に挑み、生活者の買物を楽しく豊かなものにすることを目的に本連載をスタートします。

昨今、小売業は、しばしばAmazonや楽天などのECプレイヤーとの対立軸で語られます。筆者としては、その対立構造のブレイクスルーこそが重要なイノベーションのひとつであるとも考えますが、ここではまず未来の鍵を見つけるために、あえて比較してみたいと思います。

大手ECプレイヤーもまだ手に入れられてない、実店舗の武器は一体何なのか?

その大きなひとつが「非計画購買」力だと考えます。非計画購買とは、消費者が入店前には買う予定のなかった商品を購入することを指します。ECプレイヤーは、まだサーチ中心の世界であり、サイト上でのレコメンデーション技術により進化を続けていますが、現時点では実店舗が「非計画購買」においては圧倒的に優位であると言えます。

実店舗の非計画購買率は70%と言われており、時を越え、さらには国境を越えて全世界共通のセオリーであり続けています。お客さまは何らかの買物リストを思い浮かべて来店し、お店を出る頃には3倍もの商品を自ら進んで買っているという世にも奇妙な現象が毎日起きています。

買い物リストに載るような計画購買商品の多くは、特売品として利益を削って集客を担い、店頭の非計画購買の粗利ミックスで利益を出すという「折込チラシ」のエコシステムは既に崩壊していると指摘されます。

計画購買を失うことは客数の減少をもたらし、非計画購買を失うことは客単価・粗利の減少をもたらす。人口減少社会を前に「非計画購買」という武器は、実店舗の生命線といっても過言ではありません。

いまリテール・メーカー・パートナーが没頭すべきは、テクノロジーを活用し、非計画購買を創出する「市場創造技術の共同開発」であると確信しています。

本連載のメンターかつ当社顧問でもあり、さまざまな市場創造実績を生み出し続け、私の最も尊敬するマーケターである伊東正明さん(吉野家 常務取締役)に「市場創造」についてコメントをいただききました。



「人口減少・コモディティ化による止まらぬ価格競争。成長には極めて強い向かい風が吹いています。総務省の試算では人口減少は約−0.3%/年です。逆の言い方をすれば、たった+0.4%の市場創造をし続けられれば、市場は伸びるのでは?ということです。私の座右の銘は『悲観は気分、楽観は意思』。世の中大変だから成長は厳しいという立場に立つか、市場創造をし続ければ人口減少でも大丈夫という立場に立つか。実際30年後日本のGDPは下がっているかもしれないし、規模が縮んでいる市場の方が多いかもしれません。でも、後者の立場に立続ける者のみが生き残り、前者が淘汰され、アイデアと気概をもった新規参入組が新しい時代をつくるのだと思います。ひとりでやるより仲間とやる方が『世の中の常識』を変え、市場創造を起こしやすい。『競争』ではなく『共創』の精神でメーカー同士、リテール同士、メーカーとリテール、あるいは事業会社とプラットフォーマーの共創をより積極的に起こす時代になっていると思います」(伊東氏)

とういことで、初回は、12月3日、4日に大磯プリンスホテルで開催されるマーケティングカンファレンス「リテールアジェンダ」のカウンシルメンバーで「市場創造」の同志でもある イオン九州 営業企画・デジタル本部 本部長の川村泰平さんとサントリー酒類 営業推進本部 部長の中村直人さんと連載のキックオフをしたいと思います。

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