市場創造に挑む~リテール×メーカーによる限界突破~ #02

小売の「価値」を取り戻すために。イオン九州 川村泰平・サントリー 中村直人・グランドデザイン 村尾大介

”ファクト反復”による限界突破

 
村尾  市場創造に向けて、リテールとメーカーの間には様々な課題がありますが、何が限界の突破口になると思いますか?

中村  目線を合わせることに尽きると思っています。今までモノを主語にしていると取引関係から脱却出来ず、主従関係になりやすくお互いに楽しくないですよね。

やはり顧客を主語にして、生活者のインサイトから一緒になってデータから導き出して、仮説検証を行う中で、実績が出てくると仕事が楽しくなるんですよね。議論して立てた仮説通りに成功したら、次はこれやってみようと。そうすると本当にあるべき関係性に変わっていくと思うんです。それが私が考えている突破口ですね。

川村  同感です。私が誰かに中村さんのことをお話しするとき、シェアや出荷などの価値感だけで動いている人ではないと表現します。

そうした人間関係に加えて、チャレンジの中で成功事例が欲しいですよね。村尾さんたちと一緒に取り組んでいる「Gotcha!mall」を使ったお客さまは、値引き原資も含めて1件あたり102円コストをかけて、普段より1340円たくさん買って頂いています。さらにアルゴリズムによる出しわけで1件あたりのコストを最適化していけます。

自社アプリもそうです。月に1人あたり94円かかっていますが、全部調べたところ、アプリをダウンロードする前に比べて、月に700円もたくさん買っています。

サントリーさんと取り組ませて頂いた時は、「Gotcha!mall」経由で生まれたプレミアムモルツ売上のうち53%が、利益率の高いプレミアムモルツを初めてお買い上げ頂けた新規客。28%は過去6ヶ月間お買い上げがなかった休眠客。明らかに市場創造につながっていることが確認できました。

こうした結果から店長には、現場で案内を頑張っているスタッフさんに「お礼を言ってください」と伝えました。人手不足で大変だと思うけど、アプリのクーポンを頑張っていただいたお陰でこんなにお客さまが喜んでいるし、会社もプラスになっている、と。こういう話を反復的に社内に発信し続けようと思っています。  
 

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村尾 私も常識を変えるには、ファクトの反復が必要だと痛感しています。一方で、折込チラシを発明した人を本当にリスペクトしています。数十年に渡って成功事例を大量に積み上げるプラットフォームを築いたのはすごいことです。

それに匹敵するファクトを、何倍もの速さとインパクトで積み上げるしかない。もともと買う予定だった商品ではなく、混じり気のない嵩(かさ)上げの売上と利益を。それこそが市場創造です。

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