現場起点のEC・物流最前線 #04
オムニチャネル時代の「EC・物流」、PL(損益計算書)の観点から見えてきた勘所
2019/12/25
EC物流とPLの関係
なお、在庫の一元管理はデータ上の話です。配送センターのロケーションによって、送り先の地域やボリュームにより送料が大きく変わってきます。
PL上、送料や設備費は販管費として利益を削っていきますので、なるべく低く済むような工夫が必要です。フェリシモでは、商品の量に合わせて近隣の倉庫も使いコストを変動費化させながら在庫を一元管理して出荷しています。
また、事業のPLを見られる方は「返品」の額も重要な指標になります。返品金額を考慮しておかないと、実際の売上は出荷金額から返品金額を除いたものになるため、当初は黒字だと思っていたけれど、後でみたら赤字だったという事態になりかねません。
他にも、同じ原価率の商品でも、自社ECで販売した時、店舗で販売した時、ECモールで販売した時で利益が異なります。これは原価率以外のコストの部分が主に自社ECでは固定費化され一定数以上売れると利益が増える構造になるのに対し、店舗やECモールで販売したときは数十%の手数料が常に固定で発生し続けるためです。
そのため最近、ブランディング視点でECモールでの販売をとりやめて自社ECの販売に集中する会社も多いと思いますが、直接アプローチできる顧客リストが一定数ないと、自社ECへの集客には一般的に広告費がかかるため、単純に「自社ECのほうが利益率が高い」とは言えず、冷静にシミュレーションする必要があります。
さて今回は、最近よく聞くオムニチャネルとは何なのか、当社が運用している物流とPLの観点からポイントをお伝えいたしました。実際に、オンラインとオフラインの壁を超えて顧客体験を良くするための物流とそのPLのバランスを取ろうとすると、もっと多くの変数が関係しそれらをコントロールしていく必要があります。
その先にあるニューリテールの世界は、世界中のマーケターが創意工夫を行っている熱い領域で、私自身も毎日勉強しながら実践している状態です。こうして情報発信することで、少しでも世界をより良くしていく、そのきっかけやお役に立てれば幸いです。
次回は、5G時代に備えた配送センターのAPI化、IoT化の取り組みについてご紹介する予定です。
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