関西発・地方創生とマーケティング #16

なぜ祇園辻利は、お客さまから長く愛され続けるのか

お客さまの行動を「丁寧に観察し、深く理解する」




 三好さんにとって「マーケティングとは、経営の根幹であり、強みと弱みは何かを知ること」と語ります。では、祇園辻利の強みは何なのか。それは、お客さまにとって不足のないように隅々まで気配りする営業スタイルだそうです。

 そこで「マーケティング課の人も現場に出るのですか」とお聞きすると、「接客するのではなく、お客様の行動を見る」のだそうです。

 例えば、テイクアウトメニューを注文されたお客さまは、どこで飲食するのか。そして、鞄を持ちながらワンハンドでどのように食べるのか。ゴミはどこに捨てるのか。お客さまの困っているところに目を向けるのです。

 一方で、従業員はお客さまを見ていながら、自分たちの仕事がスムーズになるように考えて行動します。「お客さま側から、そして従業員側から、両方の側面から見ないといけない」と三好さんは話します。
 

暖簾をひとつに見せるためにWebサイトをリニューアル




 昨年11月にリニューアルした、Webサイトについてお聞きしました。リニューアルの目的は、3つあるそうです。

 ひとつは、宇治茶祇園辻利と茶寮都路里は、同じ祇園辻利グループで運営していることを知ってもらうこと。2つ目に、お茶文化を守るために、今まであえて伝えてこなかった建仁寺との関係などを発信していくこと。3つ目が、お客さまに寄り添った親切なブランドサイトとECサイトにすること。

 さて、それぞれ目的は、達成できているのでしょうか。



 まず「辻利」と検索すると、トップに祇園辻利の公式サイトが出てきます。そして、しっかりと宇治茶祇園辻利と茶寮都路里が祇園辻利グループだと認識できるデザインになっています。

 特に、私は「祇園の歳時記」というコーナーが気に入っているのですが、つい読み進めたくなって、次の節季にまた見てみようと思うんですね。この企画をつくった狙いは、四季折々の日常の暮らしを感じる感性は、決してペットボトルではなく、急須で入れるお茶文化から生まれるということを感じてもらいたかったからだそうです。



 次に、中国から禅宗とともにお茶の種を持ち帰った、栄西禅師が開山した建仁寺との関係も綴られています。これについては、今までは地域に根差しているため、当たり前に行っていたことが、改めてマーケティング視点で見ると、お客さまにとってお茶がより良く見えるように、美味しく感じることに繋がるのではないか。それならそれを伝えることも決してお行儀が悪いことではない、と。

 そしてECサイトについては、既存のリアル店舗に加えて、新たにひとつの店舗として位置づけて、リニューアル後は着実に伸びているそうです。きちんと目的が達成できているWebサイトだと思います。

 さらに、パートナー企業の決め手は何だったのか、お聞きしました。

 「著名な方にお願いして、素晴らしいデザインのWebサイトが出来たとしても、それで売れるかどうかと言うと、そうでもないですよね。大事なのは、自分たちの求める付加価値は何なのかを理解してくれるのか。その決め手はトップ同士の肌感、波長が合うかではないかと思います。そういう意味でも色んな人と会って話をする、コネクションの力が大事です」

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